抄読会へのご参加ありがとうございました
2024年3月27日
抄読会へのご参加、ありがとうございました。
抄読会の内容を振り返らせていただきます。
渋川医療センター 大貫祐史
「2016年から2021年におけるデンマーク人肺化膿症患者222例の臨床的特徴」
Vaarst JK, et al. Lung abscess: Clinical characteristics of 222 Danish patients diagnosed from 2016 to 2021. Respir Med. 2023 Jun 9;107305.
2016−2021年のデンマークの222人の肺化膿症の臨床像、治療期間、入院期間や死亡率、転帰を含めた報告です。
患者背景は、62%が男性で平均年齢は65歳、COPDが35%、喫煙は70%以上、嚢胞径の平均は5cmでした。
入院期間は14日、抗生物質投与期間は38日間で死亡率は、12ヶ月で15.8%、治療後に7%に悪性腫瘍が発見されました。
歯の状態が観察された患者の中で41.6%の症例は歯科状態が不良で、歯科的状態不良が観察した場合に肺化膿症と診断される可能性が考えられ、歯科状態の改善が肺化膿症の予防につながることも期待されました。
既報では、肺化膿症と診断された患者においては咳・痰・発熱は典型的症状とされていますが、本研究ではこれらの症状が必ずしも生じるとは限らないことも示唆されました。
肺化膿症がCOPDや喫煙、鎮静剤使用、アルコール乱用、口腔内衛生状態不良と関連していることが明らかとなり、こららの症例において肺化膿症に注意して診ていく必要性が示唆されました。
群馬大学医学部附属病院 武藤壮平
「ベンラリズマブ投与を受けた重症喘息患者におけるICSの減量(SHAMAL)無作為化, 多施設, 非盲検, 第4相試験」
Reduction of daily maintenance inhaled corticosteroids in patients with severe eosinophilic asthma treated with benralizumab(SHAMAL):a randomized, multicentre, open-label, phase 4 study.
Jackson DJ, et al. Lancet. 2024 Jan 20;403(10423):271-281.
OCSを必要としない重症喘息患者において、生物学的製剤使用でICSが減らせるかどうかを明らかにした研究報告(SHAMAL試験)です。
対象は、OCS freeの重症喘息のベンラリズマブ投与が3回以上行われた125人の症例でした。
32週までにICS/LABA(ブデソニド/ホルモテロール)が減量できた症例の割合がプライマリーエンドポイントでした。
減量群125人のうち、110人がICS減量可能で、18人が中容量、20人が低容量、72人が必要時のみの吸入に減量可能でした。
ACQ-5スコアのベースラインから32週までの変化は, 減量群で0.16、AQLQスコアのベースラインから32週までの変化は, 減量群で−0.03でした。 ACQ-5スコア, AQLQスコア共に, 有意な変化は認めませんでした。
週の吸入回数が5回未満の患者では, 5回以上の患者に比べてFEV1やFeNOの変化がより顕著でした。
SHAMAL試験では, ベンラリズマブでコントロールが良好となった重症喘息の患者に対して, 92%の患者が高用量のICS減量に成功し, 60%以上はコントロールを悪化させることなくICS頓用にまで減量できました。ICSの大幅な減量にも関わらず, 87%の患者が48週目までに増悪を認めませんでした。
OCS freeの重症喘息のおいて、ベンラリズマブ投与がICS減量効果をもたらすことが示されました。
群馬大学医学部附属病院 三浦陽介
「”oligoprogression”を呈する乳癌または肺癌に対するSBRT追加の有用性を検討するランダム化第2相試験」
Tsai CJ, et al. Standard-of-care systemic therapy with or without stereotactic body radiotherapy in patients with oligoprogressive breast cancer or non-small-cell lung cancer (Consolidative Use of Radiotherapy to Block [CURB] oligoprogression): an open-label, randomised, controlled, phase 2 study.
Lancet 2024; 403: 171–82.
Phase2studyの少数の病変のみの進行性の乳癌・肺癌病変に対して、少数病変の定位照射stereotactic body radiotherapy (SBRT)の意義を検討した研究です。
大腸癌の場合は単発転移病変の場合に、局所治療によって予後延長効果が明らかになっています。また、NSCLCの第2相試験では、IV期の病変3個以下では、局所治療の方が全身治療優先よりもPFS, OSの延長が示された研究報告がありました。
標準治療に定位照射あり、なしを比較しました。
1ライン以上の全身治療を受けていて頭蓋外の5個以下の進行性病変を認めている乳癌・肺癌(NSCLC)の51例の標準治療群と55例の定位照射あり群の症例が対象となりました。
内訳は乳癌が47症例、肺癌が59症例でした。肺癌では免疫チェックポイント阻害剤が80%に既導入されていました。
全体集団でOSは有意差無し、PFSは7.2 vs 3.2カ月で有意差を認め、NSCLCでは10.0 vs 2.2, 乳癌では4.4 vs 4.2ヶ月とNSCLCにおいてのstereotactic body radiotherapy (SBRT)のPFS延長効果が示されました。
乳癌では新規病変の出現がPDの主な原因でしたが、肺癌の場合はSBRTなし群では既病変が悪化、SBRT群では新規病変の出現がPDの主な原因でした。
本研究では、重篤な有害事象は認められませんでした。
OligoprogressiveのNSCLCにおいてはSBRTのPFS延長効果が明らかになった時点で本研究が早期中止となり、さらに毒性の強い全身化学療法の追加を実施せずにPFSの延長効果が示された意義は大きいと思われました。