2026年9月抄読会~睡眠時無呼吸症候群の最新知見~

御発表頂いた清水先生、澤田英先生ありがとうございました。抄読会の内容を振り返らせて頂きます。

1) 桐生厚生総合病院 内科 清水大輔先生

「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)と認知機能・認知症リスク」
Associations of self-reported obstructive sleep apnea with cognition and dementia risk in cognitively unimpaired middle-aged adults
Abdelmessih GT, et al. Alzheimer’s & Dementia. 2026;22:e71553.

本研究は、中年期の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)が認知機能低下および将来の認知症リスクと関連するか、さらにAPOE ε4保有がその関連を修飾するかを検討した横断研究になります。対象はオーストラリアのHealthy Brain Projectに登録された、認知機能が正常な40~70歳の成人2795例で、平均年齢56.4歳、女性76%でした。OSAは自己申告によって判定され、195例(7.0%)がOSAありとされました。認知機能はCogstate Brief Battery解析にて、認知症リスクは中年期から晩年の認知症発症リスクを予測するCAIDE risk scoreを用いて評価されました。またAPOE遺伝子型も解析されました。
主要な結果として、OSA群では非OSA群と比較して記憶課題の成績が有意に低下していました(調整後Cohen’s d=−0.22、P=0.03)。一方、注意機能には有意差を認めませんでした。重要なのは、この記憶機能低下とOSAの関連が、BMI・高血圧・脂質異常症・身体活動性などの血管危険因子を考慮すると弱まった点です。さらに血管リスクを追加調整すると、OSAと記憶機能との関連は統計学的に有意ではなくなりました。このことから、OSAによる認知機能への影響には、OSAそのものだけでなく、併存する血管・代謝リスクが関与する可能性が示唆されます。
一方、認知症リスクについてはより明瞭な関連が認められました。OSA群のCAIDE scoreは7.04点で、非OSA群の5.08点より有意に高い結果でした(P<0.001、Cohen’s d=0.84)。さらに、年齢・性別・教育歴などを除き、BMI・身体活動性・高血圧・脂質異常症という修正可能な血管危険因子のみから算出したmodified CAIDE scoreでも、OSA群は2.72点、非OSA群は1.50点と有意に高い結果でした(P<.001)。つまり、OSAを有する中年者では、すでに認知症につながり得る血管リスクが集積していることが示されました。興味深いことに、APOE ε4保有はOSAと認知機能との関連を有意には修飾しませんでした。すなわち、OSA+APOE ε4という組み合わせによって記憶機能低下が明らかに増強するという結果は得られませんでした。
またOSA治療状況を考慮すると、未治療OSAでは記憶機能低下が認められた一方、治療中OSAでは非OSA群との差が明確ではありませんでした。ただし、本研究はOSAを自己申告で定義した横断研究であり、睡眠ポリグラフによるAHIや低酸素負荷の定量評価は行われておりません。したがって、OSAが認知症を直接引き起こすことや、治療によって認知症リスクを低下させられることを証明した研究ではないことに注意が必要です。今後は、OSA治療介入が中年期からの認知機能低下や将来の認知症発症を抑制できるかを検証する前向き研究・RCTが必要だと考えます。

ParameterOSA− EMMOSA+ EMMCohen’s dp
Attention0.02 (0.02)−0.04 (0.08)−0.060.49
Memory−0.00 (0.02)−0.17 (0.07)−0.220.03
CAIDE5.08 (0.19)7.04 (0.05)0.84<0.001
Modified CAIDE1.50 (0.04)2.72 (0.14)0.72<0.001

2) 群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 澤田英先生

「閉塞性睡眠時無呼吸に対する両側舌下神経刺激療法:非ランダム化臨床試験」
Woodson BT, Kent DT, Huntley C, et al.Bilateral hypoglossal nerve stimulation for obstructive sleep apnea: a nonrandomized clinical trial.Journal of Clinical Sleep Medicine. 2025;21(11):1883–1891.doi: 10.5664/jcsm.11822

舌下神経電気刺激療法は本邦でも2021年6月に保険適応となった、新しい閉塞型睡眠時無呼吸症候群の治療法になります。
今回紹介する研究は、中等症~重症閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)に対する両側舌下神経刺激療法(bilateral hypoglossal nerve stimulation: HNS-BL)の有効性と安全性を検討した、国際多施設共同・前向き・単群非ランダム化臨床試験(DREAM trial)です。CPAP療法を拒否、忍容不能または不成功だった成人を対象とし、主要評価は植込み12か月後に行われました。対象は22~75歳、BMI≦32 kg/m²、AHI 15-65回/時で、中心性・混合性無呼吸指数は総AHIの25%未満でした。
また薬物睡眠下内視鏡で軟口蓋のcomplete concentric collapseを認めないことが重要な選択条件でした。687例がスクリーニングを受け、最終的に115例が植込み対象となりました。
主要評価項目は、①4%酸素飽和度低下基準AHI(AHI4%)がベースラインから50%以上低下し、かつ20回/時未満となること。②4%酸素飽和度低下指数(ODI)が25%以上低下することの2項目でした。
12か月時点で、AHIについて基準を満たしたのは63.5%、ODIについては71.3%であり、客観的な呼吸イベントおよび酸素化の改善が確認されました。12か月PSGを完遂した89例では、AHIは平均18.3±11.8回/時減少、ODIは17.7±14.6回/時減少し、SpO₂<90%の睡眠時間も有意に減少しました。
患者報告アウトカムも良好で、Epworth Sleepiness Scaleは9.7から6.2へ低下、Functional Outcomes of Sleep Questionnaireも16.0から18.2へ改善しました。いびきについても、ベッドパートナーが「非常に大きいあるいは大きい」と評価した割合は83.5%から30.4%へ低下し、12か月時点で対象者の約90%が「非常に満足」または「やや満足」と回答しました。
安全性については、11件の重篤有害事象が10例(8.7%)に発生しました。このうちデバイス関連3例(2.6%)、手技関連5例(4.3%)、非関連3例(2.6%)でした。したがって、著者らはHNS-BLを「許容可能な安全性を有し、OSA重症度およびQOLを臨床的に有意に改善する治療」と結論づけています。
臨床的に重要なのは、本研究が従来の片側舌下神経刺激とは異なる「両側刺激」というアプローチを評価した点です。一方、単群・非ランダム化試験で比較対照群がなく、12か月までの成績であることから、CPAP療法や既存の片側HNSに対する優越性までは示していません。また、DISEでCCCを除外し、BMIやAHIにも条件があるため、本研究結果をOSA患者全般へ一般化することには注意が必要だと考えます。今後はより包括的に評価を行う必要があると著者は述べています。

2026年9月の抄読会も多くの方に御参加頂き、ありがとうございました。
今回は睡眠時無呼吸症候群に関しての2題であり、大変参考になりました。
次回の抄読会は2026年10月21日になります。
ご参加の程、宜しくお願い致します。