抄読会へのご参加ありがとうございました
2024年4月24日
抄読会へのご参加、ありがとうございました。
抄読会の内容を振り返らせていただきます。
群馬大学医学部附属病院 櫻井 麗子先生
「非小細胞肺癌におけるドライバー癌遺伝子を見つけるための包括的ゲノム・プロファイリング分析全国データについて」
Masaki Ishida, et al. Nationwide data from comprehensive genomic profiling assays for detecting driver oncogenes in non- small cell lung cancer. Cancer Science. 2024;00:1–9.
当院では2021年6月よりがんゲノム外来を開設して以来、受付総数126例で抗癌剤治療へ到達した症例は6例(6.3%)という状況です。
非小細胞肺癌に対する治療は遺伝子治療に基づいた治療となっておりEGFR,ALK,ROS1,BRAF,MET,RET,NTRK,KRAS,HER2に対する9遺伝子の治療薬が保険適応となってきています。
包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)は、主に癌の組織を用いて1回の検査で癌に関連する多数(100以上)の遺伝子を調べる検査のことを指します。これらのデータをデータベース化(C-CATデータベース)して日本人に特有は遺伝子異常などの検索に利用することを目指しています。
本研究では、後ろ向きにこれらのC-CATデータベースを利用してNSCLCの遺伝子情報を検討しました。年齢中央値は65.5歳でPS0-1が9割でした。腺癌77.5%でした。
FoundationOne CDx組織検体が693例の70.3%で同血液検体が22.4%、OncoGuideが
72例の7.3%でした。
採取方法の内訳は生検57.6%で手術が41.2%でした。
NSCLC986例のうち451人(45.7%)に変異を認め、EGFRが16.5%、次いでKRAS 14.5% でした。
腺癌の内訳では、417人(54.6%)に変異を認め、EGFRが19.7%、KRASが17%、扁平上皮肺癌128人の中では、18人(14.1%)に変異を認めました。
さらに、これらの結果でEGFR,ALK,ROS1,BRAF陰性のNSCLC330人において、CGPで新たにドライバー変異が81人(24.5%)に認められました。
すでにドライバー遺伝子変異を持っているNSCLCの患者はGCPを行わないかもしれないので、正確なドライバー変異の割合は本研究では反映されていない可能性が考えられました。
Incidence of Interstitial Lung Disease in Patients With Rheumatoid Arthritis Treated With Biologic and Targeted Synthetic Disease-Modifying Antirheumatic Drugs
「生物学的製剤治療中の関節リウマチ患者における間質性肺疾患の発生率」
Matthew C. Baker et al., JAMA Netw Open. 2023;6(3)
関節リウマチ患者におけるILD発症に対する生物学的製剤使用のリスクについての知見が乏しいため、本研究では大規模データベース(optum clinformatics data mart請求データ)を利用してILD未発症のRA患者のILD発症を薬剤毎に分析しました。
2003-2019までのoptum clinformatics data mart請求データを使用した後ろ向きコホート研究で、1年以上の生物学的製剤治療症例、既存のILDのない患者が対象、データ解析は2021年10月〜2022年4月までに行われました。
研究目的は、様々な生物学的製剤治療を受けている関節リウマチ患者のILD発症リスクの検証でした。
患者プロファイルは、女性が7−8割、白人が7割で併用薬は、MTX 4割、OCS 7割でmeanOCS量は7-12mg/dayでした。
Adalimumab(TNFα Ab;ヒュミラ)が13326例、Abatacept(CTLA4;オレンシア)が5676例、Rituximab(抗CD20 Ab;リツキサン)5444例、Tocilizumab(抗IL-6 Ab;アクテムラ)2548例、Tofacitinib(JAK inhibitor;ゼルヤンツ)1565例でした。
Adalimumab(TNFα Ab;ヒュミラ)治療中のILD発症を1とすると、Tofacitinib(JAK inhibitor;ゼルヤンツ)では0.31のHRであったのに対して、他剤では1.3-1.7のHRでした。
結論として、1)トファシチニブで治療されたRA患者は、評価されたすべての生物学的製剤で治療された患者と比較してILDの発生率が最も低く、2)調整解析後のトファシチニブで治療された患者は、アダリムマブで治療された患者と比較してILDのリスクが有意に低い結果でした。