抄読会へのご参加、ありがとうございました。
抄読会の内容を振り返らせていただきます。
2024年9月抄読会
1) 群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 澤田 友里先生 「基礎疾患からみたPCPの特徴と予後因子」 Characteristics and Prognosis Factors of Pneumocystis jirovecii Pneumonia According to Underlying Disease: A Retrospective Multicenter Study. Lécuyer R, et al. Chest. 2024 Jun;165(6):1319-1329.
本研究は、2011〜2021年までのPCPの確定診断もしくは疑い診断で入院したPCP治療を受けた481名の症例を対象とし、多施設後ろ向き観察研究です。90日死亡に対するオッズ比を検討されました。HIVが114人、non-HIVが367人でした。481人のうち、50人(10.4%)しかST合剤の予防投与がなされていませんでした。9割以上がST合剤を第一選択として治療されていました。Non-HIVにおける長期ステロイド治療例では90日の生存率は約50%と予後不良で、HIV陽性例は予後が良好でした。PCP予後不良の基礎疾患としては、固形腫瘍、 免疫介在性炎症生疾患(IMID)でした。
また、non HIVでは長期ステロイド(PSL 10mg/日を超える)投与中の患者、
痰やBALでの菌体陽性、入院時のSOFAスコアが高い患者では
90日死亡率が高い結果でした。
2) 公立富岡総合病院 竹原 和孝先生 「ANCA関連血管炎における肺胞出血について」
Alveolar Hemorrhage in Antineutrophil Cytoplasmic Antibody–Associated Vasculitis Results of an International Randomized Controlled Trial (PEXIVAS). Lynn A. Fussner1. LA Fussner, et al. American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 209 (9) 1141-1151.
ANCA関連血管炎の肺胞出血に対して血漿交換の適応はありません。米国のガイドラインとアフェレイシス学会のガイドラインでは推奨がありますが,強く推奨できない状況です。
今回のPEXIVAS試験は人工呼吸器を要するDAHを初めて組み入れた最大の試験で、
1)DAHの有無に関わらず、ANCA関連血管炎の患者の特徴と転帰を調べること
2)血漿交換と2つのステロイド投与レジメンのランダム化治療の効果を調べること
を目的としていました。
重症の肺胞出血に対して、血漿交換の介入の有無で末期腎不全あるいは死亡について検討されました。
若年でPR3-ANCA陽性例に肺胞出血例が多い患者背景でした。
重症度にかかわらず肺胞出血がある群に血漿交換後の1年生存率が良好な傾向を認め(有意差は認めず)、ステロイド投与量、漸減方法は予後に影響は与えていませんでした。結果として、肺胞出血に対する血漿交換の有効性は示されませんでした。本研究では、肺胞出血をきたした症例数が少なく、さらなる大規模な症例での血漿交換の有用性についての検討が必要と思われました。
3) 高崎総合医療センター 小林 夏緒先生 「喘息コントロールの維持療法および緩和療法としてのブデゾニド/ホルモテロールとフルチカゾンフランカルボン酸エステル/ビランテロールの比較」 Comparison of Budesonide/formoterol versus Fluticasone furoate/vilanterol as maintenance and reliever therapy for asthma control: a real-world observational study. Huang WC, et al. BMC Pulm Med. 2024 Aug 1;24(1):374.
• 本研究では、台湾の中国医科大学病院にてSTEP3, 4の気管支喘息患者を対象とした後ろ向き研究で、ICS/LABA(FF/VIL)のレスキュー使用の効果を検証しました。気管支喘息患者において、ブデソニド(BUD)/ホルモテロール(FOR)は、ホルモテロールの速効性と長時間作用型気管支拡張作用により、コントローラーとレスキュー薬の両方の役割を果たすことができ、このMART(maintenance-and-reliever therapy)による治療を受けた喘息患者は、急性増悪率の低下と症状コントロールの改善が報告されています。
これまでに、フルチカゾンフランカルボン酸エステル (FF) /ビランテロール (VIL) も急速な気管支拡張と持続的な抗炎症効果をもたらしますが、喘息コントロールのための MARTとしてFF/VIL を調査した研究はありません。
本研究では、BUD/FOR群36例、FF/VIL群125例が対象とされました。ACTスコアはFF/VIL群で有意に改善、FeNO値はFF/VILと比較してBUD/FOR群で有意に減少しました。一方で、FeNO値はBUD/FOR群で0.2ppb減少し、FF/VIL群で0.8ppb増加しました。
MARTとしてのFF/VILがBUD/FORに匹敵した有効性がある可能性が示唆されました。