2024年6月の抄読会

医学生の皆様、研修医の皆様、医会員の皆様

今月の抄読会のご案内です。 医学生、研修医の皆様にもオンラインでの開催のため、お気軽にご参加いただきたいと思っています。 今月の紹介論文をご案内させて頂きます。


====== 6月26日(水)19:00〜 Microsoft Teams形式======

1)群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 鶴巻寛朗先生

「生物学的製剤による治療を受けた重症喘息患者における臨床的反応と寛解」

Clinical Response and Remission in Patients With Severe Asthma Treated With Biologic Therapies.

Hansen S, Baastrup Sondergaard M, von Bulow A, Bjerrum AS, Schmid J, Rasmussen LM, et al. Chest. 2024;165(2):253-66.

重症喘息においては5種類の生物学的製剤が使用可能であり、いずれも喘息症状の改善、増悪抑制、肺機能の改善、定期ステロイドの減量に関する効果が示されています。しかし、喘息はheterogeneousな疾患であり、治療の達成を判定する統一された基準は定められていません。現在、各国でこれまでの生物学的製剤の治療に関する情報を基にして、生物学的製剤の治療下における達成目標(Clinical remission, CR)を策定しています。日本においては、山口大学の大石先生、松永先生らにより臨床的寛解の達成状況を報告され、喘息診療実践ガイドライン2023で臨床的寛解における3つの基準(ACT≧23, 増悪なし, 定期ステロイド薬使用なし)が提案されました。今回の抄読会では、2024年2月にCHEST誌で報告されたデンマークの重症喘息レジストリーにおいて生物学的製剤による臨床的反応とCRの達成状況およびそれらに影響を与える因子を解析した論文を提示し、そこからCRについて少し考える機会ができればと思います。

2)前橋赤十字病院 呼吸器内科 宇野翔吾先生

「植物中心の食事は放射線画像の肺気腫と逆相関する。CARDIA Lung Studyの結果より。」

A Plant-Centered Diet is Inversely Associated With Radiographic Emphysema: Findings from the CARDIA Lung Study Mariah K, et al. Chronic Obstr Pulm Dis.2024 Mar 26;11(2)164-173. 

COPDは重大な公衆衛生上の大きな問題あり、予防の重要性が指摘されていますが、その予防戦略は限られています。この論文は、若い喫煙者が植物中心の食事を遵守することで、将来のCOPD発症のリスクを低下させるかどうかについて報告しています。気腫性変化は一度発症すると不可逆的で、変化が起こる前の段階での介入が重要であると言えますが、禁煙以外にも有効な生活指導があるということは、日常診療において役立つ事かと思いましたので紹介いたします。

3)群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 吉田大祐先生

「80歳以上の患者における免疫チェックポイント阻害剤の安全性:後ろ向きコホート研究」

Tatsuki Ikoma et al.  Safety of immune checkpoint inhibitors in patients aged over 80 years: a retrospective cohort study.  Cancer Immunol Immunother. 2024 May;73(7):126

高齢患者への免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の安全性を評価するために、関西医科大学附属病院でICIによる治療を行った患者を対象として行われた後ろ向きコホート研究です。安全性の指標として免疫関連有害事象(irAE)の発生率にフォーカスを当てており、好酸球数>118[/μL]の患者ではirAEの発生率が有意に上昇した(感度=0.51, 特異度=0.75)という解析結果が得られています。単一施設での後ろ向きコホートではありますが、臨床現場での簡便な指針としての有用性に期待を持ちました。