抄読会へのご参加ありがとうございました。

2023年6月28日 抄読会へのご参加、ありがとうございました。
抄読会の内容を振り返らせていただきます。

伊勢崎市民病院  豊田正昂
重症市中肺炎に対するヒドロコルチゾン

Hydrocortisone in Severe Community-Acquired Pneumonia
Dequin PF, et al. N Engl J Med. 2023 May 25;388(21):1931-1941

重症市中肺炎でICUに入室していた患者をヒドロコルチゾン(200mg/dayを4 or 7日間でその後は漸減)とプラセボ群に割りあてて、800例が登録され1:1に割り振られました。敗血症性ショックの症例は除外されました。
28日目までの死亡率はステロイド群で400人中25人の6.2%、395人中45人の11.4%でした。ステロイド群の方が在院日数が有意に短く、気管挿管発生率もステロイド群で18%、プラセボ群で65人の29.5%と違いが見られました。
気管内挿管発生率・昇圧剤使用率がステロイド群で少なく、消化管出血発生率やICUでの感染症発生率は両群で同等でインスリン使用率はステロイド群で高率でした。

結論として、ステロイドの使用は重症市中肺炎の28日目までの死亡率を有意に下げました。
Limitationとしては、プラセボ群の死亡率が11.9%と予想(27%)より低く、重症度が低かった可能性があり、病原菌の分離が必ずしも出来ていなかったことでした。


群馬大学医学部附属病院  若松 郁生
「人工知能が特発性肺線維症と他の間質性肺疾患を鑑別する」

A comprehensible machine learning tool to differentially diagnose idiopathic pulmonary fibrosis from other chronic interstitial lung disease」

公立陶生病院のILD患者1068名のデータを利用し臨床医2名と放射線読影医がMDDを行ってILDを診断しました。
一方で、AIには1068人中の854名を学習用に使用し、残りの症例をAIに診断をさせました。AI診断に先立って、AIにはDeep learningと機械学習でUIPとNon-UIPとの鑑別を行うように学習させました。非侵襲的データとして患者背景や血液検査結果、肺機能を利用しました。
MDDとAIの診断内訳で診断一致はIPFで368/455でした。一方で、AI-IPFの精度は診断一致率が83.6%でIPFの感度80.7%、特異度85.8%で陽性的中率80.9%、陰性的中率85.6%でした。
いずれの診断でもIPFは同様に予後不良でした。MDDがIPFと診断した不一致症例は、AIがIPFと診断した不一致症例より予後が不良な傾向を認めました。
結論として、AIはMDDとほぼ同等のIPFの診断精度が得られ、VATSを回避できる可能性が期待されます。
Limitationとしては、AI診断プロセスが明確でない事とILDの診断医師の数が少なかったことでした。

また若松先生からは、画像診断支援ソリューションが様々な企業から開発されて実用化の段階に至っている事を紹介していただきました。例えば、レントゲン上の肺癌を疑わせる領域を示し、結節・腫瘤影、浸潤影、気胸などを検出してくれて、画像診断コメントを付けてくれるサービスが実用化されて群大病院でも導入されている事を紹介していただきました。

群馬大学医学部附属病院 鶴巻 寛朗
Type2-low 重症喘息コホートにおける増悪プロファイルとリスクファクター:喘息増悪の表現型を評価するための臨床試験

McDowell PJ et al. Exacerbation Profile and Risk Factors in a Type-2-Low Enriched Severe Asthma Cohort: A Clinical Trial to Assess Asthma Exacerbation Phenotypes.
Am J Respir Crit Care Med. 2022 Sep 1;206(5):545-553.

301人の喘息症例で増悪例が183/301(60.8%)で390増悪イベントが解析されました。
301人の増悪ありと無しの群の比較では、女性、肥満、喘息増悪受診歴、OCS使用歴、低肺機能が目立ちました。
この内でT2 low/HighでFeNO 20, EOS 150がカットオフ値として解析したところ、T2 lowの群では、前年喘息増悪歴が少なく、鼻茸有病率が低値でした。
またT2 lowの喘息増悪時は、ウイルス感染率が高率でした。
T2 lowの方も増悪時にT2 highになることがあり、T2 lowは状況によってT2 highになることもあることが判明しました。