抄読会へのご参加、ありがとうございました。
20220222 抄読会へご参加いただき、ありがとうございました。
抄読会の内容を振り返らせていただきます。遅くなり申し訳ありません。
1)群馬大学医学部附属病院 前野敏孝先生からは、関節リウマチ患者におけるニューモシスチス肺炎患者における死亡の結果と危険因子:多施設後ろ向きコホート研究についての論文をご紹介いただきました。
2005年7月から2020年10月の間に、関節リウマチ患者でニューモシスチス肺炎(PCP)にかかった70人を対象に検討しました。36人がdifinite PCP,34 人がprobable PCPであり、70人中69人が疾患修飾性抗リウマチ薬(DMADs)を使用し、MTX単剤使用は40%、MTXと他のDMARDs使用は45.7%でした。ステロイド併用は62.9%で、平均PSL6.3mg/日使用していました。PCPはMTX単剤開始後12ヶ月以上経って、またMTXと他剤併用では3ヶ月以内に多くが発症していました。18.6%がPCP治療にもかかわらず死亡しました。PCPによる死亡に関連する危険因子は、多変量解析では、関節リウマチ関連間質性疾患(RA-ILD)、PCP治療の遅れに有意を認めました。生存した57人中22人38.6%が発症前と同じDMARDsを使用し、28人49.1%が別のDMADRDsを使用しましたが、1名再発したのみでした。治療の遅れを避けるために、特にRA-ILD合併の患者ではPCP発症の兆候への注意が必要である、との報告をご発表いただきました。
2)渋川医療センター 村田 圭裕先生からは、COVID-19肺炎疑いで、上気道スワブにて陰性であるBALF検体での診断基準についての論文をご紹介いただきました。
鼻咽頭拭い液PCRでは偽陰性になりやすく、BALによるSARS-Cov-2検出精度が高いことが知られており、BALにおけるSARS-Cov-2検出に関し、13の原著論文(868名の患者を含む)よりシステマティックレビュー、メタアナリシスを行い評価しました。少なくとも1回の以前の鼻咽頭拭い液で陰性となった患者において、BALによるSARS-CoV-2陽性との割合の推定値は20%でした(95%信頼区間;11-30%)。またそのうえ、BALの解析により、2/3以上のケースで他の病原体(主に細菌)の識別につながりました。リミテーションとしてはほとんどが後ろ向きの結果であったこと、ヨーロッパ(イタリア、ベルギー)で多く、アメリカは1件、アジアなしであった、との報告をご発表いただきました。
3) 前橋赤十字病院 蜂巣克昌先生からは、Medicina (Kaunas)に発表された、腫瘍とサルコイドーシスとの関連についての論文をご紹介いただきました。
2007年1月から2017年12月の間、サルコイドーシスと診断された312例を検討し、うち25例がサルコイドーシス発症後に癌を発症しました。肺癌は7例でした。発症までの時期はばらばらであり、1例は重複癌でした。サルコイドーシスのマーカーは腫瘍発現時に有意に低下しており(特にACE)、またリンパ節も有意に縮小しておりました。サルコイドーシスの活動性の減少が腫瘍発生と一部関連しているかもしれないと考えられました。
またサルコイドーシス発症前に癌を発症していたのは312例中34例で、大腸癌が7例でした。有意差があったのは高齢であることだけでした。有意差はないも、ACE,sIL-2Rは癌の既往例で低い傾向にありました。サルコイドーシスによる臓器障害は少なく、ステロイド治療を要する症例も少ない状態でした。
サルコイドーシスの活動性と腫瘍の発現との関連は、Th1/Th17有意の免疫状態が関連している可能性が示唆される、との報告をご発表いただきました。
来月の抄読会は、3月22日(水)19時〜です。よろしくお願いいたします。