専攻医 神戸先生の論文です。

この度、専攻医の神戸先生のcase report(呼吸器・アレルギー内科、産婦人科が診療した、粟粒結核、ARDS、呼吸不全の妊婦の1救命例)がERSのBreathにアクセプトされました。おめでとうございます。

Kanbe M, Yatomi M, Wakamatsu I, Uno S, Hanazato C, Aoki-Saito H, Masuda T, Yamaguchi K, Kasahara N, Miura Y, Tsurumaki H, Hara K, Koga Y, Sunaga N, Higeta D, Kameda T, Hisada T and Maeno T.

A pregnant woman with severe dyspnoea. Breathe 2022; 18: 220012

https://doi.org/10.1183/20734735.0012-2022

以下論文の紹介となります。

「今回、私達は粟粒結核を発症し呼吸不全に陥った35週妊婦の救命例に対して、症例報告を行いました。粟粒結核は死亡率が20-30%と非常に高いことが知られており、妊娠は粟粒結核発症の重要な危険因子の一つです。現在、結核合併の呼吸不全の妊婦に対する分娩のタイミングに関しては、明確な基準が定まっていません。
本症例の妊婦は、咳嗽が1ヶ月の経過で増悪し、呼吸不全にて前医より当院に救急搬送され、粟粒結核による呼吸不全、ARDSと診断されました。入院初日にさらに呼吸状態が増悪し、人工呼吸器管理となりました。私達は、産婦人科医と協議し、母子共に救命を目指し、まず早期産での分娩を行った後に、母親に対してHERZ投与を含めた集中治療を行いました。以後、抗菌薬による薬疹なども発症しましたが、抗結核薬やmPSL投与を中断することなく継続したところ、母親の全身状態は徐々に改善しました。人工呼吸器離脱後、母親は他院転院となりましたが、転院後も治療経過は順調でした。結核治療が終了した現在、母子ともに健康に生活されています。
本症例より、妊娠後期の呼吸不全をきたした、重症の粟粒結核の妊婦の場合、早期分娩後に集中治療を行うことも、治療戦略の一つとなると考えられました。」  神戸 美欧、矢冨 正清