5月24日抄読会につきまして
医学生の皆様、研修医の皆様、医会員の皆様
今月の抄読会のご案内です。
医学生、研修医の皆様にもZoomでの開催のため、お気軽にご参加いただきたいと思っています。
今月の紹介論文をご案内させて頂きます。
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5月24日(水)19:00〜 Zoom形式
1)群馬大学医学部附属病院 宇野 翔吾
「閉塞性睡眠時無呼吸症候群および糖尿病性腎症患者における、アルブミン尿進行に対する持続陽圧呼吸療法の効果:ランダム化臨床試験」
Ester Z, et al.
Continuous Positive Airway Pressure Effect on Albuminuria Progression in Patients with Obstructive Sleep Apnea and Diabetic Kidney Disease: A Randomized Clinical Trial
Am J Respir Crit Care Med.2023 Mar 15;207(6):757-767.
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は血糖コントロール障害と糖尿病性腎症のような血管障害のリスクと関連していると考えられています。しかし腎症進行に対して無呼吸や低呼吸の改善がもたらす効果は明らかではありません。本論文は、糖尿病性腎症とOSAを併せ持つ患者においてCPAPを使用することによる腎症抑制効果を検討しており、CPAP群全体としては腎症進行の抑制効果が示されませんでしたが、4時間以上CPAPを使用した群においては上記抑制効果が認められました。これらの事は日常診療においてOSA患者の指導を行う上で役に立つと思われましたのでご紹介させていただきます。
2)群馬大学医学部附属病院 矢冨 正清
Swedenにおける、レミエール症候群を含むFusobacterium necrophorum侵襲的感染症の8年の後方視的検討
D. Nygren and K. Holm. (2020) 1089.e7e1089.e12. Clinical Microbiology and Infection
Fusobacterium necrophorum感染症は、グラム陰性嫌気性桿菌であり、若年者に発症しやすく、時に敗血症などを呈し、重症化することがある。上気道感染に引き続く内頚静脈血栓および菌血症、さらには敗血症性肺塞栓を惹起する症候群として、レミエール症候群が知られており、Killer sore throatの1つとして見逃してはいけない疾患である。
最近、私達はⅡ度熱傷を感染源とし、膿胸を発症した10歳代の女性のFusobacterium necrophorum感染症の救命例を経験した。そこで、Fusobacterium necrophorum感染症の臨床研究を分析したところ、頭頚部以外が感染源の場合、比較的高齢者が多く、併存疾患も多く、致死率も高いという結果であった。この論文を通して、Fusobacterium necrophorum感染症の理解を深め、これからの診療に生かしたい。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1198743X19306548
3)群馬大学医学部附属病院 古賀康彦
「間質性肺疾患による肺高血圧症(III群)の吸入トレプロスチニルのRCT後の延長試験」
Waxman A, et al.
Long-term inhaled treprostinil for PH-ILD: INCREASE open-label extension study.
EJR. 2023, Online ahead of print.
III群PHに対する有効な治療薬はこれまで存在していませんでした。2021年に、吸入トレプロスチニル(16週間)のIII群PHに対するRCTがNEJMに発表され、IPFによるPH(III群)に対して6分間歩行距離やFVCの改善効果が示されました。本論文では、ERJにアクセプトされたばかりの、RCT後のオープンラベルの64週間の延長試験の結果を報告します。なお本剤はPHに対して、2023年4月に田辺三菱製薬から発売開始となっています。呼吸器内科医にとても重要な情報と思われましたので、ご紹介させて頂きます。
https://erj.ersjournals.com/content/early/2023/03/29/13993003.02414-2022