2026年6月抄読会まとめ~梅雨でも皆で知識共有~
御発表頂いた鶴巻先生、宇野先生、根生先生ありがとうございました。
抄読会の内容を振り返らせて頂きます。
1) 群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 鶴巻寛朗先生
「重症好酸球性喘息に対するベンラリズマブ投与下における喘息増悪プロファイル(the BenRex study):多施設前向きコホート研究」
Logan J, Martin K, Gillespie L, et al. Asthma exacerbation profile of benralizumab for severe eosinophilic asthma (the BenRex study): a multicentre, prospective cohort study. Lancet Respir Med. 2026 May 29: S2213-2600(26)00096-2.
インターロイキン-5受容体α拮抗薬であるベンラリズマブは、血中好酸球を枯渇させ、重症喘息の増悪をプラセボと比較して約50%減少させます。本研究では、ベンラリズマブ投与中に発生する増悪の根本的な原因を特定することを目的としました。
研究デザインに関しては、BenRex試験は多施設前向きコホート研究であり、喘息に対するベンラリズマブの国の承認基準を満たす参加者を登録しました。本研究は英国にある15の重症喘息センターで実施されました。ベースラインデータを収集した後、非盲検下でベンラリズマブを12〜18ヶ月間投与しました。増悪時には、治療を開始する前に参加者は医師の診察を受け、呼気一酸化窒素濃度(FeNO)、スパイロメトリー、喘息コントロールテスト、および血液と喀痰の採取が行われました。
結果ですが、2019年9月30日から2024年4月23日の間に、156名の個人において121件の増悪イベントが評価されました。参加者の90名(58%)は女性、66名(42%)は男性であり、147名(94%)が白人でありました。増悪時の血中好酸球数の中央値は0(四分位範囲 0-0)個/μLでした。喀痰が得られた増悪の55%(49件中27件)で気道好中球増多が認められました。C反応性タンパク(CRP)の中央値は、ベースラインの3.00 mg/L(1.00-6.00)から増悪時の9.00 mg/L(3.00-17.00)に上昇しました(p=0.0067)。39の喀痰サンプルのうち8サンプル(20.5%)で臨床的に関連のあるウイルス病原体が認められましたが、ウイルス自体は39サンプルのうち22サンプル(56.4%)で検出されました。インフルエンザA、メタニューモウイルス、およびライノウイルスが最も一般的なウイルス病原体でした(それぞれ39サンプル中2サンプル[5.1%]で検出)。モラクセラ・カタラーリス(22サンプル中3サンプル[13.6%])、インフルエンザ菌(22サンプル中4サンプル[18.2%])、および肺炎球菌(22サンプル中2サンプル[9.1%])も重要な原因菌でした。DNA-好中球エラスターゼ複合体(p=0.0080)およびアズロシジン-1(p=0.012)の濃度は、ベースラインから増悪時にかけて上昇しました。評価された増悪111件のうち56件(50.5%)でFeNOが50 ppb以上であり、これは細菌検出オッズの低下と関連していました。FeNOはCRPや喀痰中好中球と相関はありませんでした。
今回の研究から、患者がベンラリズマブで治療されている場合、好酸球性炎症は増悪に関与していないことが示唆されます。気道好中球増多、ウイルス病原体、および喀痰マイクロバイオームの変化は、増悪の最も顕著な原因として感染症を指摘しています。この観察は、ベンラリズマブによる治療にもかかわらず発生する喘息増悪のプレシジョン・マネジメント(個別化治療)を改善するはずであると述べられています。

2) 前橋赤十字病院 呼吸器内科 宇野翔吾先生
「肺癌患者における診断前後の身体活動、および運動習慣の開始・維持と生存との関連:韓国コホート研究」
Kim YW, Kwak KI, Choi AR, et al. Association of Pre- and Postdiagnosis Physical Activity, Promotion and Maintenance With Lung Cancer Survival: A Nationwide Cohort Study. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2025;16:e70092.
著者らは、韓国国民健康保険データベース(National Health Insurance Service)を用いて、肺癌患者における診断前後の身体活動(physical activity:PA)の変化と生命予後との関連を検討した全国規模の後ろ向きコホート研究を報告しました。対象は2010~2016年に肺癌と診断され、診断前後2年以内に健康診断を受診した23,257例で、主要評価項目は全死亡および肺癌死亡でした。身体活動は自己記入式質問票を用いて評価し、中等度運動(30分以上、週5日以上)または高強度運動(20分以上、週3日以上)を満たす場合を身体活動ありと定義しました。
対象者は診断前後の身体活動状況から、①非活動維持群(診断前後とも身体活動なし)、②活動維持群(診断前後とも身体活動あり)、③活動開始群(診断前なし・診断後あり)、④活動中止群(診断前あり・診断後なし)の4群に分類されました。多変量解析では、診断後も身体活動を維持した群は非活動維持群と比較して全死亡および肺癌死亡のリスクが有意に低く、最も良好な予後を示しました。また、診断前には運動習慣がなかった患者でも、診断後に身体活動を開始した群では死亡リスクの有意な低下が認められました。
一方、診断前に運動習慣があっても診断後に中止した群では、生存率の改善効果は認められず、診断後の身体活動の継続が重要であることが示唆されました。
さらに、身体活動量(MET-min/week)と死亡リスクとの間には用量反応関係が認められ、身体活動量が多いほど全死亡および肺癌死亡リスクは低下していました。この傾向は年齢、性別、喫煙歴、BMI、併存疾患などで調整後も一貫して認められ、サブグループ解析でも概ね同様の結果が得られました。
本研究は、2万人を超える大規模集団を対象とし、診断前後の身体活動の変化に着目して長期予後との関連を評価した点が強みであると言えます。一方で、観察研究であるため因果関係を証明するものではなく、病期やPerformance Status、治療内容など予後に影響する重要な因子を十分に調整できていない可能性があります。また、身体活動は自己申告で評価されており、測定誤差やリコールバイアスの影響も否定できません。
以上より、本研究は肺癌患者において診断後も身体活動を継続すること、さらには診断後から新たに運動習慣を開始することが、生存率の改善と関連する可能性を示しました。呼吸リハビリテーションや運動療法を肺癌診療に積極的に取り入れる意義を支持するエビデンスとして、臨床的に重要な知見であると思われます。

3)高崎総合医療センター 呼吸器内科 根生明李先生
「間質性肺疾患における様々な生検タイプの収率と安全性:系統的レビューとメタアナリシス」
Mor E, et al. Yield and safety of different biopsy types in interstitial lung disease: a systematic review and meta-analysis. Eur Respir Rev. 2026 Apr;35.
著者らは、間質性肺疾患(interstitial lung disease:ILD)の診断に用いられる各種肺生検法について、診断収率と安全性を比較することを目的としてシステマティックレビューおよびメタアナリシスを実施しました。近年、従来の経気管支肺生検(transbronchial lung biopsy:TBLB)に加え、クライオプローブを用いた経気管支肺凍結生検(transbronchial lung cryobiopsy:TBLC)が広く普及している一方、外科的肺生検(surgical lung biopsy:SLB)は依然として診断のゴールドスタンダードとされており、それぞれの有用性と安全性を整理することが本研究の目的であります。
解析の結果、TBLCはTBLBと比較して診断収率が有意に高く、より大きく構造が保たれた組織検体を採取できることから、特発性肺線維症(IPF)を含む各種ILDの病理診断に有利であることが示されました。一方で、TBLCでは気胸および中等度以上の出血の発生率がTBLBより高く、安全性の面では注意が必要でした。特に出血対策としてバルーンカテーテルによる気管支閉塞や全身麻酔下での施行など、十分な安全管理体制の重要性が示唆されました。
一方、SLBは依然として最も高い診断精度を有するものの、全身麻酔や胸腔鏡手術を必要とし、術後急性増悪や呼吸不全、死亡を含む重篤な合併症リスクがTBLCより高いことが再確認されました。そのため、近年では多職種によるMultidisciplinary Discussion(MDD)を前提とし、画像所見や臨床所見のみで診断困難な症例に対して、まずTBLCを検討する施設が増加しています。
著者らは、現時点のエビデンスから、TBLCはTBLBより高い診断収率を有しながらSLBより侵襲性が低く、診断精度と安全性のバランスに優れた生検法であると結論付けています。一方で、TBLCの成績は施設経験や術者技量、麻酔方法、出血予防手技などに大きく左右されることから、十分な経験を有する施設で適応を慎重に判断して施行すべきであるとしています。
本メタアナリシスは、ILD診療における生検法選択に関する最新のエビデンスを示したものであり、「診断収率のみならず侵襲性や安全性も考慮した個別化された生検法の選択」が重要であることを改めて示した研究であります。特にTBLCは、適切な症例選択と安全対策を前提とすれば、SLBに代わる有力な病理診断手段として位置付けられる可能性が示されました。
根生先生には、高崎総合医療センターで実際にTBLCを行った症例も提示頂き、大変参考になりました。

2026年6月の抄読会も多くの方に御参加頂き、ありがとうございました。
次回の抄読会は2026年7月22日になります。
梅雨も明け、夏本番ですが、暑さに負けず知識の共有を行いましょう!
ご参加の程、宜しくお願い致します。

