2026年2月抄読会まとめ~目の前の臨床に役立つNTM・肺癌・PPFEの最新論文~

御発表頂いた村田先生、三浦先生、豊田先生ありがとうございました。
NTM、肺癌、PPFEに対して臨床に即した話題を提供頂き、有意義な抄読会となりました。抄読会の内容を振り返らせて頂きます。
1) 渋川医療センター 呼吸器内科 村田圭祐先生
「難治性肺MAC症患者に対するアミカシンリポソーム吸入懸濁液(ALIS)の効果とアミカシン(AMK)耐性誘導」
Effects of Amikacin Liposome Inhalation Suspension and the Development Amikacin Resistance in Patients With Refractory Mycobacterium avium Complex Pulmonary Disease.
Kurahara Y, et al. Open Forum Infect Dis. 2025 Mar 1;12(3):ofaf118.
この研究は、難治性肺MAC症に対するアミカシンリポソーム吸入懸濁液(ALIS;アリケイス)の効果と、アミカシン耐性発現のメカニズムを調べたものです。
国立病院機構近畿中央呼吸器センターで2021年8月~2023年12月の間にALIS治療を開始し、最低6ヶ月間治療を受けた難治性MAC-PD患者44名を対象に後ろ向き分析を実施しました。
対象患者の年齢中央値は72.0歳で、女性が多数(84.1%)を占めていました。非空洞性結節気管支拡張型(NC-NB)が19名(43.2%)、空洞型が25名(56.8%)でした。
全体の喀痰培養陰性化率は56.8%(25/44)でありましたが、NC-NB型では84.2%(16/19)、空洞型では36.0%(9/25)と有意な差が見られました(p = 0.001)。さらに、間欠的投与を受けた患者18名のうち9名(50.0%)でも培養陰性化が達成されました。培養陰性化の中央時間は147.0日であり、陰性化を達成した25名のうち18名(72.0%)はALIS開始から6ヶ月以内に陰性化しました。
培養持続陽性を予測する因子として、血清CRP≥ 1 mg/dL、空洞型、クラリスロマイシン(CLM)耐性の3つが重要であることが判明しました。これら3つの特性をすべて持つ患者は、CRP < 1 mg/dL、NC-NB型、CAM感受性の患者と比較して、培養陽性のリスク比が10.81(95%信頼区間:1.66–70.40)と高い結果が出ました。
副作用としては、軽度の発声障害が21名(47.7%)で発生し、その中央発現日は11日でありました。この症状により、16名が間欠的投与に移行しました。その他に咳や呼吸困難(各11.4%)、口腔咽頭痛(13.6%)、疲労感(9.1%)などが報告されましたが、ほとんどの症例で治療は継続可能でした。発声障害が治まった後も8名の患者(50.0%)は間欠的投与の継続を希望しました。
アミカシン耐性に関して、培養持続陽性19名のうち7名(36.8%)でアミカシン耐性(MIC ≥ 128 µg/mL)がみられました。ALIS投与全患者44例からみれば、15.9%がこれに相当しました。7名のアミカシン耐性例のうち5名(71.4%)でrrs遺伝子変異が確認され、4名がposition 1408の変異、1名がposition 1491の変異でした。rrs変異があるすべての症例で、既存のCAM耐性との交差耐性が確認されました。アミカシン耐性発現例の71.4%は空洞型であり、アミカシン感受性例の8.8%と比較して有意に高い結果がでました(p = 0.0096)。
難治性肺MAC症に対するALISを含むレジメンは、空洞型よりもNC-NB型で高い培養陰性化率を達成しました。ALIS投与中に発現するアミカシン耐性は、難治性MAC-PDの治療選択肢を制限する可能性があることが示唆されました。

2) 群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 三浦陽介先生
「間質性肺炎合併肺癌患者におけるドライバー遺伝子異常」
Ikeda S, et al. Targeting driver mutations in lung cancer with interstitial pneumonia: A nationwide study in Japan. Eur J Cancer. 2026 Jan 12;235:116232.
間質性肺炎 (IP) を合併する非小細胞肺癌 (NSCLC) 患者は薬剤性肺障害ハイリスク群であり、 EGFRなどの一般的なドライバー遺伝子変異は低頻度であることが示唆されています。 そのため遺伝子検査が控えられ、 KRAS、 BRAF、 METといった実際には存在している標的可能な変異を見逃す可能性があります。
本研究では、 IP合併NSCLC患者における遺伝子検査の実臨床での実施状況、 ドライバー変異の頻度、 および分子標的治療の安全性・有効性を明らかにすることを目的としました。
本研究は多施設共同後ろ向き研究であり、 日本国内37施設から登録されたIP併存の進行または再発 NSCLC患者1,256例を解析対象としました。
遺伝子検査の実施割合は59.2% (95%CI 56.5–62.0) であり、 多遺伝子検査の実施割合は41.0% (95%CI 38.3–43.8%) であった。 頻度の高い変異としては、KRAS : 4.7% (うち、 1.9%はG12C)、EGFR : 2.9%、BRAF V600E : 1.6%、MET エクソン14スキッピング : 1.6%との結果でした。
薬剤性肺障害の発生率は、 ソトラシブで0% (6例中0例)、 オシメルチニブでは50% (8例中4例)、 アレクチニブでは33% (3例中1例)、 ダブラフェニブ+トラメチニブおよびテポチニブではいずれも 25% (各4例1例) でした。
全生存期間は、 標的治療を受けたドライバー変異陽性患者で最も長いという結果でした。
全生存期間 (中央値) としては、標的治療ありドライバー変異陽性患者 : 39.2ヵ月、
標的治療なしドライバー変異陽性患者 : 24.0ヵ月、ドライバー変異陰性/不明患者 : 13.8ヵ月でした。
IP合併肺癌患者において遺伝子マルチ検査実施率が低いことが分かりましたが、分子標的治療による薬剤性肺障害の頻度はドライバーごとに異なっている可能性があり、分子標的治療により予後を延ばせる可能性があるため、遺伝子マルチ検査を実施して個別リスクに応じて柔軟に対応する必要があると考えられました。

3)群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 豊田正昂先生
「特発性胸膜肺実質線維弾性症に対する栄養教育の早期介入」
Ohta H, et al. Early intervention of nutritional education for idiopathic pleuroparenchymal fibroelastosis of interstitial lung disease. Respiratory Investigation Volume 63, Issue 4, July 2025, Pages 472-480.
間質性肺疾患(ILD)患者において、BMIの低下と体重減少は、疾患の進行および予後不良と関連しています。特に、典型的に痩せている特発性PPFE患者においては、迅速な栄養サポートが不可欠となる可能性があります。
本研究では、PPFEと診断された93名の患者を連続的にスクリーニングし、最終解析には特発性PPFE患者63名を含めました。患者は、診断後6か月以内に管理栄養士による栄養指導を受けたかどうかに基づき、早期介入群と非早期介入群の2群に分類されました。Cox回帰分析を用いて死亡リスク因子を評価し、回帰直線を用いた散布図を用いて体重の経時的推移を評価しました。
63名の患者のうち、22名が早期介入を受け、41名が受けませんでした。本研究では、初期段階の患者(本研究ではFVC 70%以上かつ過去1年間に有意な体重減少がない患者と定義)への早期介入は、早期介入を行わなかった患者と比較して、体重減少率が有意に低下したことと関連していました。しかし、診断時のFVCまたは体重減少状況に関わらず、両群間の生存率には有意差は認められませんでした。
当院では、管理栄養士が実施した体系的な栄養教育プログラムを概説しました。介入によって生存率は改善しなかったものの、初期段階の患者に対する早期の栄養教育は体重減少率を低下させ、予後改善に寄与する可能性があります。早期の栄養サポートによる体重維持は、PPFEの管理において重要な治療戦略となる可能性があります。

2026年2月の抄読会も多くの方に御参加頂き、ありがとうございました。
次回の抄読会は2026年3月25日になります。
ご参加の程、宜しくお願い致します。