2026年1月抄読会まとめ~新年からすぐに業務で役立つ内容でした~
御発表頂いた小林頂先生、横田先生、山村先生ありがとうございました。
新年から活発な討議が行え、有意義な抄読会となりました。
抄読会の内容を振り返らせて頂きます。
1) 高崎総合医療センター 呼吸器内科 小林頂先生
「EBUSガイド下縦隔病変に対する経気管支クライオ生検:Cryo-EBUSの診断能と安全性」
Roselló SP, et al. Diagnostic performance and safety of endobronchial ultrasound-guided transbronchial cryobiopsies in the diagnosis of mediastinal lesions. Respiratory Medicine 247 (2025) 108294.
縦隔リンパ節腫大や縦隔腫瘤の診断ではEBUS-TBNA(超音波気管支鏡ガイド下針生検)が標準的手技として広く使われています。しかし、EBUS-TBNAは細胞診中心で検体量が少なく、リンパ腫などで診断が付きにくい、またサルコイドーシスや結核などで組織構築が評価しにくい、また肺癌の遺伝子検査が十分にできない場合があるといった問題がありました。
本研究は、縦隔・肺門リンパ節腫大または縦隔腫瘤を有する患者において、EBUSガイド下経気管支クライオ生検(Cryo-EBUS)が、従来のEBUS-TBNAと比較してより高い診断能を有するか、また十分な遺伝子検索用検体が得られるかを検証した前向き観察研究であります。2023年3月から2024年9月にかけて、縦隔病変を有する連続100症例を対象としました。全例において同一手技内でEBUS-TBNA(22G針)とCryo-EBUS(1.1mmプローブを使用し、22G針の穿刺孔から挿入する手法、本研究における凍結時間は 3~5秒、通常3検体)の両方が施行されました。主要評価項目は診断率であり、副次評価項目として安全性、肺癌バイオマーカー検出能、およびラーニングカーブが解析されました。
結果として、Cryo-EBUSの診断率は80%(95%CI: 72-88%)であり、EBUS-TBNAの72%(95%CI: 63-81%)と比較して有意に高い結果でした。両手技を併用した場合、診断率は86%に向上し、特に癌病変においては93.3%(95%CI: 87.6-99.1%)という高い診断率が得られました。また、PET-CT陽性病変においてCryo-EBUSは特に有用でした。良性疾患でもCryo-EBUS群の方がEBUS-TBNA群よりも有意に高い結果でした。
Cryo-EBUSは質の高い組織検体を提供し、非小細胞肺癌症例の91%において、PD-L1やNGSを含むバイオマーカー解析が可能でした。また、ラーニングカーブの検討では、最初の15症例での診断率は53.3%でありましたが、それ以降の症例では84.7%へと有意に向上しました(p=0.001)。
安全性に関しては、気胸および気縦隔気腫という軽微な合併症が3例認められたのみで、いずれも保存的に軽快し、重篤な出血や感染症は認められませんでした。
Cryo-EBUSは縦隔病変の診断において安全かつ有効な手技であり、特にEBUS-TBNAとの併用によって診断精度が向上することが分かりました。また、分子標的薬等の検索に必要な十分な検体採取が可能であり、PET集積のある病変において特に推奨されます。ラーニングカーブが存在するため、安定した手技習得には一定の経験数(約15例)が必要であることが示唆されました。今後標準化されたプロトコルや多施設研究が必要と思われます。

2) 桐生厚生総合病院 内科 横田暢先生
「肺MAC症におけるシタフロキサシン含有レジメンの有効性」
Urabe N, et al. Clinical efficacy of sitafloxacin-containing regimens for Mycobacterium avium complex pulmonary disease. BMC Pulmonary Medicine 2025;25:532.
ニューキノロン系抗菌薬(FQ)は、in vitroおよびin vivoにおいて抗MAC活性を示すことが知られており、中でもシタフロキサシン(STFX)は他のFQと比較して強力な抗MAC活性を有することが報告されています。それにもかかわらず、肺MAC症治療におけるSTFXの臨床的有用性に関するデータは乏しく、現行のガイドラインでも推奨治療には含まれていないのが現実です。
本研究では、肺MAC症患者に対しSTFXを含むレジメンを6ヶ月以上投与した場合の臨床的有効性を評価することを目的としました。
2015年1月から2024年3月までに東邦大学医療センター大森病院において、STFXを含むレジメンによる治療を6ヶ月以上継続した肺MAC症患者50例を対象とした単施設後ろ向きコホート研究です。外科的切除を行った症例や他菌種との混合感染例は除外されました。
対象患者は、STFX導入のタイミングと適応に基づき以下の4群に分類されました。第1群は手術例1例を除外した全症例(49例)です。第2群は、標準治療(GBT)の開始から6ヶ月以上経過した時点でSTFXが追加された群(40例)で、初期から併用した群は除外されました。第3群は、標準治療中に画像が悪化、または改善が乏しかった(minimal improvement)群(38例)です。第4群は、STFX開始時点で、喀痰培養陽性が持続していた群(19例)でした。
主要評価項目は、STFX開始6ヶ月後の「画像的改善(NICEスコアで評価)」、「菌陰性化」、「自覚症状の改善(CATスコアで評価)」としました。なお、本研究は後ろ向き研究であり喀痰採取が不定期であったため、菌陰性化の定義は「4週間以上の間隔をあけた2回連続の培養陰性」という独自の基準を用いました。
患者背景として、年齢中央値は68歳、女性が82%を占めました。画像パターンは結節・気管支拡張型が主体であり、非空洞性が56%、空洞性が32%でした。CAM耐性菌は検査された株の14%に認められました。STFX導入の主な理由は、胸部CT所見の悪化が56%、および持続的な培養陽性が40%でした。EBやRFP使用困難であることも少数ですが理由として含まれていました。
各群における治療成績は全体的に低調な結果でした。第1群(全体)では、画像改善率18.4%、症状改善率19.1%、菌陰性化率20.0%でした。第2群(GBT開始6ヶ月以降に追加)では、それぞれ12.5%、20.0%、12.5%でした。第3群(画像増悪例)では、それぞれ13.2%、18.4%、13.3%でした。第4群(排菌持続例)においては、画像改善5.3%、症状改善15.8%、菌陰性化は評価可能であった16例中2例(12.5%)にとどまりました。
上記からはSTFXの追加は限定的な治療効果しか得られず、標準治療が使用不可能な場合に補助的な選択肢となり得る程度に過ぎないことが分かりました。
| 放射線学的改善 | 自覚症状の改善 | 喀痰培養陰性化 | |
| Group1 | 18.4% | 19.1% | 20% |
| Group2 | 12.5% | 20% | 12.5% |
| Group3 | 13.2% | 18.4% | 13.3% |
| Group4 | 5.3% | 15.8% | 12.5% |
3)群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 山村彩先生
「重症喘息を合併した慢性好酸球性肺炎に対する抗IL-5/IL-5R抗体製剤による治療」
Monica Colque-Bayona, et al. Anti-IL5/5R in the treatment of chronic eosinophilic
pneumonia and severe asthma. Eur Ann Allergy Clin Immunol Vol 57, N.6, 286-288, 2025.
慢性好酸球性肺炎(CEP)は、好酸球性炎症を病態基盤として、肺内への著名な好酸球浸潤を特徴とする疾患になります。しばしば喘息を合併し、2型炎症を起こしやすい患者に発症しやすいと言われてます。ステロイドに対して良好な反応性を示す一方で、ステロイド減量や中止に伴う再発が多く、長期投与による副作用が問題となります。
近年、好酸球性炎症を標的として生物学的製剤(抗IL-5抗体、抗IL-5α抗体)が使用されるようになってきています。CEPに対しても生物学的製剤の効果が期待されますが、その報告は限られています。本論文では、慢性好酸球性肺炎に重症喘息を合併した患者に対してIL-5、IL-5α受容体抗体製剤を使用し、良好な経過が得られた症例について報告されています。方法と対象ですが、単一施設で、後ろ向き観察研究で行われました。2010年から2023年にIL-5、IL-5α受容体抗体製剤による治療を受けた患者のうち、背景に喘息を有していて、慢性好酸球性肺炎と診断された患者が対象となりました。慢性好酸球性肺炎と診断された際の平均年齢は39.6歳で男女6名が対象となりました。
本研究での診断基準は、一般的な慢性好酸球性肺炎の診断基準に基づいて行われました。
2週間以上持続する呼吸器症状に加え、CTでの特徴的所見を伴っており、BALまたは末梢血での好酸球数の上昇を認め、ほかの好酸球性疾患が除外されていることとしました。
評価の方法としましては、生物学的製剤開始前と開始1年後における、末梢血好酸球数・ACTのスコア・喘息の増悪回数・経口ステロイド投与の有無や1日あたりの投与量について評価を行いました。
患者背景ですが、全例で高用量ICS/LABA吸入を行っていましたが、喘息コントロールは不良でした(ACT 16~18点)。また5例でPSLを使用していました(平均投与量12mg/日)。6名のうち、5例は重症コントロール不良喘息およびアレルギー性鼻結膜炎を合併していて、1例は喘息・慢性閉塞性肺疾患(COPD)オーバーラップを呈していました。2例は元喫煙者でした。使用した生物学的製剤の内訳としましては、メポリズマブ2例、レスリズマブ2例、ベンラリズマブ2例でした。
結果に関しましては、末梢血好酸球数は平均1,316.6/μL(400~3,970/μL)から60/μL(0~150/μL)へと著明に減少しました。ACTは改善していて、全例で20点以上となりコントロールが達成されました。年間の喘息増悪回数の平均は2.5回から0.6回へ減少しました。バイオ製剤による治療を1年間行った後、経口ステロイドを使用していた5例のうち、3例で経口ステロイドを中止することができました。1例では1日あたりのプレドニン投与量が30 mgから10 mgへ減量され、もう1例は5mgを継続していて、治療前後での変更はありませんでした。抗IL-5/IL-5α抗体治療導入後、慢性好酸球性肺炎の再発は認められていません。また、スパイロメトリー値に変化は認められませんでした。
本研究におきましては、抗IL-5/IL-5α抗体製剤は重症喘息を合併するCEP患者に対して経口ステロイド治療の減量・中止および再発抑制に寄与することが示されました。
CEPに対する抗IL-5/IL-5α抗体製剤に関する有効性のデータについては未だ限定的ではありますが、CEPおよび重症喘息を有する患者において、安全かつ有効な治療選択肢となりうると思われます。

2026年1月の抄読会も多くの方に御参加頂き、ありがとうございました。
次回の抄読会は2026年2月25日になります。
ご参加の程、宜しくお願い致します。

