2025年5月の抄読会

医学生の皆様、研修医の皆様、医会員の皆様

今月の抄読会のご案内です。 医学生、研修医の皆様にもオンラインでの開催のため、お気軽にご参加いただきたいと思っています。 今月の論文紹介をさせていただきます。


====== 5月28日(水)19:00〜 Microsoft Teams形式======

1)群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 矢冨 正清先生

「妊娠中の気管支喘息」

Daniela C. et al. Asthma in pregnancy. Allergy Asthma Proc 44:24–34, 2023.

近年、喘息治療の進歩は目覚ましく、10%を占めるとされる重症喘息において、早期からの生物学的製剤の重要性が認識されている。

 一方で、若年者の難治性喘息において、生物学的製剤の積極的投与が困難な場合があり、その一つが妊娠可能な女性への投与である。私は、挙児希望のある重症喘息の女性に対して、生物学的製剤を使用していたが、治療継続の判断に苦慮した。近年の喘息と妊娠の最新の知見について、興味をもったため、最近の知見を紹介し、生物学的製剤の位置づけを確認する。

2)群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 山口 公一先生

[日本および北米の抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎患者におけるB細胞エピトープの比較解析:免疫レパトアと肺関連死亡率の直接的関連性]

Koichi Yamaguchi , Paul Poland, Lei Zhu, Siamak Moghadam-Kia, Rohit Aggarwal, Toshitaka Maeno, Akihiko Uchiyama, Sei-Ichiro Motegi, Chester V Oddis, Dana P Ascherman

本年度、日本呼吸器学会および日本リウマチ学会より膠原病関連間質性肺炎に関する新たなガイドラインが発表され、IIMにおいては抗ARS抗体および抗MDA5抗体が診療の主軸として取り上げられています。抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎は従来、予後不良とされてきましたが、近年の治療法の改良により救命率の向上が報告されています。しかし、これまでの報告の多くはアジアからのものであり、予後不良例や急性進行性間質性肺炎の発症を予測するバイオマーカーは未だ不十分です。

本研究では、留学先の米国ピッツバーグ大学において、日本および北米の抗MDA5抗体陽性患者の臨床的特徴の比較に着目し、B細胞エピトープと病態との関連を、両国のヒト血清を用いて検討しました。今回はその前段階として行った、北米における抗MDA5抗体陽性患者の臨床的特徴に関する研究もあわせて紹介します。

3)藤岡総合病院  吉田大祐先生

「誤嚥性肺炎における呼吸器ウイルス感染の役割を探る: 下気道感染症例の包括的な分析」
Daijiro Nabeya, et al. Exploring the role of respiratory virus infections in aspiration pneumonia: a comprehensive analysis of cases with lower respiratory tract infections. BMC Pulmonary Medicine 25, Article number: 78 (2025).


細菌性肺炎では、細菌感染に先行して呼吸器ウイルス感染が生じることで、その後に肺炎球菌やインフルエンザ菌などが下気道に侵入し、定着し、増殖することが促進されると考えられています。今回ご紹介する論文では、誤嚥性肺炎においても、単に「嚥下障害の病歴→細菌感染」というだけでなく呼吸器ウイルスの感染が関与している可能性を示しており、その予防にはウイルス感染防止策も必要であることを示唆しています。