2025年4月抄読会まとめ
2025年度から学術係の担当が変更となりました。
皆様、1年間宜しくお願い致します。
また御発表頂いた古賀先生、澤田先生ありがとうございました。
抄読会の内容を振り返らせて頂きます。
1)群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 古賀 康彦先生
「IPFとPPFを対象としたLPA1拮抗薬:アドミルパラントの有効性と安全性」
Efficacy and Safety of Admilparant, an LPA 1 Antagonist, in Pulmonary Fibrosis: A Phase 2 Randomized Clinical Trial.
Corte TJ, Behr J, Cottin V, Glassberg MK, Kreuter M, Martinez FJ, Ogura T, Suda T, Wijsenbeek M, Berkowitz E, Elpers B, Kim S, Watanabe H, Fischer A, Maher TM. Am J Respir Crit Care Med. 2025 Feb;211(2):230-238.
ニンテダニブの登場後、いまだに特発性肺線維症に対する治療薬は、ピルフェニドンとニンテダニブの2剤、進行性肺線維症の治療薬はニンテダニブが唯一の治療薬のままです。特異的PDE4B阻害剤であるネランドミラストが特発性肺線維症及びPPFのいずれに対しても有効性が期待されている一方で、その他の抗線維化薬としてLPA1拮抗薬が開発されてきました。しかしながら、LPA拮抗作用とは無関係な肝胆道系の有害事象によりLPA1拮抗薬の開発が停滞していました。
今回ご紹介頂いた論文は、第二世代LPA拮抗薬として開発されたアドミルパラントのIPFとPPFに対する第2相RCTです。
抗線維化薬治療を同時に受けている患者を含む、IPFとPPFの患者の2つのコホート群で、第2世代の経口 LPA1 拮抗薬であるadmilparantの有効性・安全性の評価を行いました。
対象は、IPFコホートは40歳以上、7年以内にIPFと診断された患者群。PPFコホートは21歳以上、スクリーニング時にHRCTで肺全体の線維化が10%を超え、2年以内に進行した群であり、関節リウマチに関連する ILD 以外の結合組織疾患 ILD の患者は除外されました。
Primary Endpointは、IPF患者におけるベースラインから26週までの%FVC変化率であり、Secondary Endpointは、PPF患者におけるベースラインから26週までの%FVCの変化率、各コホートにおけるベースラインから26週までのFVCの絶対変化量、肺線維症の急性増悪、安全性でした。
研究期間は26週間で、プラセボとadmilparant 60mg/日、admilparant 120mg/日の3群で比較が行われました。
結果としましては、IPFコホートでは、admilparant 120mg/日を内服した群は、プラセボ群と比較して62%の%FVC減少抑制効果を認めました。PPFコホートでは、69%の%FVC減少抑制効果を認めました。また、FVCの低下量はIPFコホートでプラセボ群と比較して45.5mLの差を認め、PPFコホートでは87.4mLの差を認めました。
また抗線維化薬の内服の有無に関わらず、admilparantの効果は一貫して認めました。
admilparantは安全・忍容性も高く、TEAEによる中止率は低かったことも示されました。


2)群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 澤田 友里先生
「成人における原因不明または難治性慢性咳嗽」
Unexplained or Refractory Chronic Cough in Adults
Richard S. Irwin, M.D., and J. Mark Madison, M.D. N Engl J Med. 2025 Mar;392:1203-14
慢性咳嗽はガイドラインの記載のとおり、評価すべき項目が多岐に渡ります。実際の臨床現場では、十分な評価が行えないまま、難治性咳嗽としてP2X3受容体拮抗薬が処方されている可能性も示唆されています。今回の論文では、真の難治性咳嗽の原因として咳過敏性に着目し、解析が行われました。結果としては、慢性咳嗽の約10.5%が原因不明または難治性と診断されていました。その原因としては、迷走神経シグナル伝達の神経障害性変化(咳過敏性)の重要性が示唆されました。対応として、ランダム化比較試験で有効性が示されたマルチモーダル言語療法や薬理学的神経調節(アミトリプチリン、ガバペンチン、モルヒネなど)の使用を検討し、あわせて反応性の不安やうつも対処すべきとされています。
また、新たな神経シグナル阻害薬であるカムリピキサントの第Ⅲ相試験が本邦で進んでいることも提示頂きました。慢性咳嗽患者ではempiric治療を行うのではなく、個々の患者でtreatable traitsが重要であると再確認させて頂きました。
次回の抄読会は5月28日になります。ご参加の程、宜しくお願い致します。