2024年7月の抄読会

医学生の皆様、研修医の皆様、医会員の皆様

今月の抄読会のご案内です。 医学生、研修医の皆様にもオンラインでの開催のため、お気軽にご参加いただきたいと思っています。 今月の紹介論文をさせて頂きます。


====== 7月24日(水)19:00〜 Microsoft Teams形式======

1)群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 砂長則明先生

「高齢者進行非小細胞肺癌に対する免疫療法または免疫療法併用化学療法」

Yoko Tsukita, et al. Immunotherapy or chemoimmunotherapy in older adults with advanced non-small cell lung cancer. JAMA Oncol. 2024;10:439-447.

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)±化学療法はドライバー遺伝子変異/転座のない進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者に対する標準治療ですが、高齢者患者に対するエビデンスは未だ少ないため、その有効性および安全性の検証が望まれています。今回ご紹介する論文は、北東日本研究機構(NEJ)グループにより行われたNEJ057臨床試験:75歳以上の未治療進行非小細胞肺癌患者における免疫療法併用化学療法の有効性と安全性を検討する多機関共同後ろ向き観察研究の結果となります。75歳以上の未治療進行・再発NSCLC患者(初回治療が分子標的薬である症例とEGFR遺伝子変異/ALK融合遺伝子陽性例は除外)のうち、ICI単剤、ICI+化学療法、プラチナ併用化学療法、単剤化学療法のいずれかで治療が開始された1245例を対象とした後ろ向きコホート研究であり、年齢中央値78歳(範囲:75〜95歳)の高齢者NSCLC患者におけるICI±化学療法のリアルワールドデータが示されています。本論文のご紹介の後に、当院におけるICI±化学療法のリアルワールドデータ研究の進捗状況についても少し触れさせていただきます。

2)群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 黒岩裕也先生

「患者と臨床医ががん診療の一環として電子的患者報告アウトカム評価を使用した経験について」

Amelia Payne, et al. Patient and clinician-reported experiences of using electronic patient reported outcome measures (ePROMs) as part of routine cancer care. J Patient Rep Outcomes. 2023;7:42.

医師や他者の解釈を介せず、患者や被験者から直接得られた評価結果を「患者報告アウトカム(PRO:Patient Reported Outcome)」と呼び、被験者の主観的なデータを収集することが近年重要視されてきています。従来は質問票や被験者日誌などの紙媒体での測定(pPRO:paper PRO)が主体でしたが、近年スマートフォンなどの電子機器を利用したデータ収集も行われるようになり(ePRO:electronic PRO)、まだまだ普及はしておりませんが、注目されてきています。今回、日常のがん診療において、患者と臨床医がePROを使用した結果、それぞれのシステムの理解度、コミュニケーション、疾患理解、意思決定等の変化について、使用経験を報告した文献をご紹介いたします。

3)群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 根生明李先生

「Dupilumab上乗せで2型炎症を呈するCOPD増悪の年間発生率を減少させ呼吸機能改善をもたらすかを検証した二重盲検プラセボ対照第Ⅲ相無作為化比較試験について」

Dupilumab for COPD with Blood Eosinophil Evidence of Type 2 Inflammation. ;N Engl J Med . 2024 May 20 . PMID : 38767614

デュピルマブは、2型炎症の主要かつ中心的な促進因子であるIL-4とIL-13の共有受容体を遮断するヒト型モノクローナル抗体であり、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と2型炎症を有し増悪リスクの高い患者を対象とした第3相試験で有効性と安全性が示されていますが、この所見が第2相第3相試験で確認されるかどうかは不明でした。今回の抄読会では、第3相二重盲検無作為化試験において、Dupilumab上乗せが中等度また高度の増悪の年間発生率の減少や呼吸機能の改善に寄与するかについて検証した論文に興味を持ったので紹介いたします。