2024年10月の抄読会
医学生の皆様、研修医の皆様、医会員の皆様
今月の抄読会のご案内です。 医学生、研修医の皆様にもオンラインでの開催のため、お気軽にご参加いただきたいと思っています。 今月の論文紹介をさせていただきます。
====== 10月23日(水)19:00〜 Microsoft Teams形式======
1)桐生厚生総合病院 内科 大澤 翔先生
「自己免疫疾患を有する非小細胞癌患者に対する免疫チェックポイント阻害薬のリスクと生存率についての全国規模の多施設後ろ向き研究(NEJ047)」
Risk and survival of patients with non-small cell lung cancer and pre-existing autoimmune disorders receiving immune checkpoint blockade therapy: Survival analysis with inverse probability weighting from a nationwide, multi-institutional, retrospective study (NEJ047).
Tetsuhiko Asao, et al. Lung Cancer. 2024 Aug: 194:107894
非小細胞肺癌の薬物治療は毎年さまざまな進展があり、その中でも免疫チェックポイント阻害薬はその有用性が多く報告されています。しかし、自己免疫疾患を有する患者ではその病勢悪化やirAEの懸念から臨床試験では除外されていることが多く、安全性に関する報告は限られています。今回の論文は自己免疫疾患を発症している非小細胞癌患者に対する有効性と安全性を評価することを目的に実施された後ろ向きコホート研究を報告したものです。普段の肺癌診療への参考になればと思い紹介させていただきます。
2)公立富岡総合病院 内科 神戸 美欧先生
「市中肺炎に対するセフトリアキソンの用法・用量別の有効性および安全性に関する前向きコホート研究」
Comparative prospective cohort study of efficacy and safety according to dosage and administration of ceftriaxone for community-acquired pneumonia.
Nakanishi Y, et al. J Infect Chemother. 2024 Sep 7:S1341-321X(24)00257-5.
市中肺炎(CAP)に対する経験的治療薬としてのセフトリアキソン(CTRX)は一般的に行われていますが、用法・用量の違いによる有効性と安全性に関する前向きなエビデンスは限られています。本研究では、市中肺炎(CAP)の入院成人患者を対象に、CTRXの1日2回1g(1gq12hr)投与と1日1回2g(2gq24hr)投与の間で、初期治療の失敗、30日死亡率、副作用を比較されています。その結果、両者間の有効性または安全性に関して有意な差は認められませんでしたが、CTRX 1gq12hrは副作用の観点ではより安全な選択肢である可能性が示唆されました。日常診療の一助になればと思い、ご紹介させていただきます。
3)群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 吉田 虎士朗先生
「好酸球性多発血管炎性肉芽種症に対するベンラリズマブとメポリズマブの比較」
Benralizumab versus Mepolizumab for Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis.
Michael E. Wechsler, et al. The New England Journal of Medicine. 2024;390:911–21.
好酸球性多発血管炎性肉芽種症(EGPA)は、ステロイド療法が基本治療とされていますが、治療期間が長期になるほど副作用や合併症を伴うことがあるほか、再燃のリスクもあります。MIRRA試験において、Mepolizumabが寛解維持期間延長、再燃リスク軽減、経口ステロイド薬の減量することが示され、再燃/難治性EGPAの治療薬として承認されました。一方、重症喘息の治療薬として承認されているBenralizumabは、重症喘息において血中および組織中の好酸球を急速にほぼ完全に減少させることが示されており、EGPAの治療選択肢となることが示唆されています。今回の抄読会では、再燃/難治性EGPA患者を対象にBenralizumabとMepolizumabの有効性と安全性の比較評価を目的に行われた9ヶ国50施設、52週間の二重盲検ランダム化非劣性試験について報告した論文を紹介いたします。