抄読会へのご参加ありがとうございました
2024年5月22日
抄読会へのご参加、ありがとうございました。
抄読会の内容を振り返らせていただきます。
群馬大学医学部附属病院 矢冨 正清
「好酸球性喘息におけるTezepelumabとMepolizumab、Benralizumab、Dupilumabの有効性の比較:A Bayesian Network Meta-analysis」
Tanawin Nopsopon et al. Comparative Efficacy of Tezepelumab to Mepolizumab, Benralizumab, and Dupilumab in Eosinophilic Asthma: A Bayesian Network Meta-analysis
本研究では、重症喘息に対する生物学的製剤:テゼペルマブ、デュピルマブ、ベンラリズマブおよびメポリズマブに関するそれぞれのRCTをネットワークメタアナリシスによって統合解析し、増悪率、FEV1.0、ACQを間接比較されました。末梢血好酸球数300cells/μL以上を対象とした10件のRCTで計9201人が対象とされました。
その結果、好酸球数が300個/μL以上の好酸球性喘息患者において、テゼペルマブおよびデュピルマブはベンラリズマブおよびメポリズマブと比較して有効性が良好でした。
しかし、統計学的に有意な差の多くは、増悪率と気管支拡張前FEV1ではMCID以下でした。本研究結果より、好酸球性喘息患者では、増悪の改善にはベンラリズマブよりもテゼペルマブ、デュピルマブ、メポリズマブ、肺機能の改善にはメポリズマブよりもデュピルマブやテゼペルマブが好ましい結果が示唆されました。
本研究のlimitationは、これらの生物学的製剤の直接比較試験が存在しないため、直接比較と間接比較の統計的矛盾を評価することができなかったこと、エビデンスの確実性は非常に低いか中程度であった事でした。
群馬大学医学部附属病院 若松 郁生
「一酸化炭素チェッカー付き禁煙スマートフォンアプリのランダム化比較試験」
Katsunori Masaki et al. A randomized controlled trial of a smoking cessation smartphone application with a carbon monoxide checker. npj Digital Medicine (2020) 3:35
2019年に禁煙治療支援アプリ:CureAppSCの有効性が示され、2020年に保険適応となり、現在多くの医療機関の禁煙外来で処方されています。本研究は多施設共同ランダム化単一非盲検試験で、2017年10月~2018年1月に全国31クリニックの禁煙外来から584人を登録し1:1にランダム割付し、介入群はCOチェッカー使用可能なアプリ、コントロール群のアプリではCOチェッカーを使用しませんでした。
結果として、介入群で長期に高い禁煙率が得られました。その理由として、アプリのチュートリアル機能やカウンセリングの実施、チャットボットによる離脱症状や渇望に対処するためのアドバイスに起因していると考えられました。
また、一般的な禁煙外来の治療成績(CAR 9-24週)は約40%であり、本臨床試はcontrol群でもCAR(9-24週)が50.5%と高い結果でした。この結果は、control群であっても医師と看護師の両方による集中カウンセリングを受け、高頻度にバレニクリンの処方を受け(>70%)、早期リタイアした人が排除されていたことが要因と考えられました。
介入(CASC)群で禁煙に成功した人は、失敗した人よりアプリの機能をより日常的に使用しており、使用頻度が高いほど禁煙率も高い結果でした(チャットボット平均利用回数136回vs 80回)。
結論として、標準禁煙治療にCureAppSCを併用すると、9 週目から 24 週目までの 筋炎継続率(CAR) を大幅に改善しました。禁煙デジタル療法は、喫煙率を減らすための有望戦略であり、今後は世界規模での研究が待たれます。