抄読会へのご参加ありがとうございました

2024年2月28日 
抄読会へのご参加、ありがとうございました。
抄読会の内容を振り返らせていただきます。

渋川医療センター 村田圭祐
「膀胱癌に対するBCG膀胱内注入療法後にBCG感染症を発症するまでの時間に関するシステマティックレビュー」

Paolo Cabas, et al. BCG infection (BCGitis) following intravesical instillation for bladder cancer and time interval between treatment and presentation: A systematic review. Urol Oncol. 2021 Sep;39(2021):85-92

間質性肺炎治療中に肉眼的血尿を契機に膀胱癌が見つかった症例を経験し、BCG膀胱内注入療法を経験された方を診ているのが本論文を紹介したいと思った契機です。
BCG膀胱内注入療法が腫瘍特異的T細胞の活性化をもたらし抗腫瘍効果を導くのが治療の機序になり、予後延長効果が認められています。
ただし疫抑制剤や免疫抑制治療量を服用している方が、重症のBCG注入療法後感染症を引き起こす懸念があり禁忌となっています。
BCG注入療法後感染症は、全身性播種性の感染が90%ほどで、感染臓器として多いのが脳神経、肺、感、骨髄、筋肉、血管、関節でした。局所性の感染頻度は播種性より少なかったですが、陰茎、前立腺、精巣、腎臓が主な感染臓器でした。
筋肉、関節、血管、前立腺感染の菌検出率は50%以上と高めで、陰茎、腎・肝、肺からの菌検出率は50%以下の低い傾向を認めました。
BCG感染症は治療4週以内の早期発症が多いですが、治療して数ヶ月後の忘れたころに生じる事も認識しておく必要があります。
PZAは自然耐性があるため、治療としてはINH+RFP+EBの3剤治療を行うのが標準治療となっています。


前橋赤十字病院 蜂巣 克昌
「台湾で抗凝固薬投与を受けた心房細動患者における間質性肺疾患の発症」

Chan et al. Development of Interstitial Lung Disease Among Patients With Atrial Fibrillation Receiving Oral Anticoagulants in Taiwan. JAMA Netw Open. 2022 Nov 1;5(11):e2243307.

2010-2017の新規非弁膜症性心房細動患者、106044例が組み入れられたNOACとILDとの発症をみた研究です。傾向スコアでワーファリンと比較がされました。
FXa因子阻害剤(エドキサバン、リバロキサバン、アピキサバン)の方がワーファリンよりもILDの発症率が高く(100人/年間 0.29 vs 0.17, ハザード比1.54; P<0.001)、トロンビン阻害剤であるダビガトランとワーファリンとの間には有意差を認めませんでした。また、両群間で肺癌やインフルエンザ、喘息の発症率には相違は認められませんでした。
IPFの発症に関しても、FXa因子阻害剤(エドキサバン、リバロキサバン、アピキサバン)の方がワーファリンよりも有意に多い結果でした。さらに追跡期間中に抗線維化薬治療を受けたのは、FXa因子阻害剤(エドキサバン、リバロキサバン、アピキサバン)では100人あたり9.18人であったのに対して、ダビガトラン群では5.56人、ワーファリン群では3.03人でした。結果として、追跡期間中にILDと診断されFXa因子阻害剤(エドキサバン、リバロキサバン、アピキサバン)で治療された患者は、ワーファリンで治療を受けた患者よりも抗線維化薬治療を必要とするILDリスクが高い傾向を認めました(オッズ比;3.01; P=0.03)。
FXa因子阻害剤(エドキサバン、リバロキサバン、アピキサバン)がILD発症リスクを上昇させた原因は、凝固系第VII因子を減少させて線維芽細胞の遊走能低下に関連していたのではないかと考察されていました。またFXa因子阻害剤(エドキサバン、リバロキサバン、アピキサバン)とアミオダロンとが頻繁に併用されていたことも影響があったのではないかと考察されていました。
結論として、非弁膜症性Af患者でFXa因子阻害剤(エドキサバン、リバロキサバン、アピキサバン)の治療はILD発症と関連している可能性があり、肺への悪影響を注意深く観察する必要性が示唆されました。


群馬大学呼吸器・アレルギー内科 前野 敏孝
「高齢者におけるmRNAベースRSVプレFワクチンの有効性と安全性」

Efficacy and Safety of an mRNA-Based RSV PreF Vaccine in Older Adults Wilson E, et al. N Engl J Med. 2023 Dec14;389(24):2233-2244.

本論文とは異なるRSウイルスへのワクチンが2024年1月に本邦で発売されたタイミングですが、本研究は高齢者へのRSウイルスへのワクチンに対する効果と安全性に関する研究結果です。
RSウイルスの構造として、F表面融合タンパクがありウイルスの侵入に不可欠です。また、Gタンパクが侵入する細胞への付着に役立っています。既発売のアレックスビーはF表面融合タンパクを抗原として有効性が示されています。
本論文のワクチンはモデルナ社が作成したmRNAワクチンです。RCTの第2-3相試験で対象は60歳以上でした。免疫不全状態の方は除外されていました。
35541人をワクチンとプラセボ群に割り付けられ、主要評価項目はRSウイルス関連の下気道感染で、その発症数がmRNA群9例、プラセボ群55例と約84%の有効性を認めました。
またRSV亜型(A型とB型)とでは、A型で約90%、B型で約70%の有効性でした。
高齢の方でも有効性は変わらず、RSウイルスのタイプAとタイプBではタイプAの方が有効性が高い傾向を認めました。
副作用は局所疼痛、倦怠感、関節痛などでした。
ブースター接種の適切性については今後の検討課題です。

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