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1月抄読会
1)高崎総合医療センター 小林 頂先生
「IPF患者での6分間歩行試験から得られる予後予測評価」
Bloem A, et al. Prognostic value of the 6-minute walk test derived attributes in patients with Idiopathic Pulmonary Fibrosis. Respir Med. 2024 Nov 19:107862.
オランダで実施されたIPF患者における6分間歩行から得られる予後予測価値を評価した研究です。
本研究では、抗線維化薬治療を受けているIPF症例が半数以上含まれており、計216名のIPF患者で、6分間歩行の予後予測因子としての重要性が検討されました。BMI 26.2とIPF集団にしては肥満傾向のある症例が集まっていました。本研究では従来のGAPスコアに加えて、例えば6分間歩行距離(<413m), 6分間歩行中minimum SpO2(86%)であった場合にGAPスコアを2点追加するような修正GAPスコアが導入されて、それによる予後曲線への影響が検討されました。その結果、6分間歩行中minimum SpO2(86%)の場合にGAPスコアを2点追加するスコアリングを行った場合に、既存のGAPスコアよりIPFの予後予測性が高まる結果が得られました。また本研究症例の中には、GAP I, GAP II, GAP IIIで6分間歩行中のminimum SpO2<86%の割合がそれぞれ31%, 57%, 88%もおり、GAP IやIIであってもdesaturationを来すIPF症例が多くいることが示されました。
以上の結果を踏まえて、6分間歩行でSpO2最低値<86%のIPF患者は予後が悪く、GAPモデルにSpO2低下の修正加点をすることで、IPF患者の予後予測がより正確に行うことができるようになる可能性が示唆されました。
2)伊勢崎市民病院 横田 暢先生
「肺MAC症におけるマクロライド耐性プロファイルの多様性」
Fukushima K, et al. Variability of macrolide-resistant profile in Mycobacterium avium complex pulmonary disease. Antimicrob Agents Chemother. 2024 Nov 6;68(11):e0121324.
NTM症であるMACの呼吸器病変(MAC-PD)に対しては、多剤併用療法中に9.2-12.0%の患者でマクロライド耐性(MR)が出現します。そして、後天性MRの80-100%ではrrl遺伝子変異が原因となることが知られています。これまでに、MR出現後のマクロライド治療の継続の是非については結論が出ていません。そのため、本研究では、大阪刀根山医療センターにおける2012年1月から2022年6月までに新たにMR-MAC-PDと診断され追跡調査が可能であった68例が解析対象とされました。
その結果、68人全員がMR診断前にマクロライド曝露歴がありました。うち43人はMR獲得後もマクロライド治療が継続されていました。その中で43人中1人のみがマクロライド感受性に転換していました。一方で、マクロライドを中止した25人中13人がマクロライド感受性菌に転換していました。感受性菌への判明は、マクロライド中止後から1−2年の経過が多く、1年以内や数年後に判明した症例もいました。
さらに、30人の患者でMR検出時と最新の菌株を反復配列多型(VNTR)解析を用いて比較しました。その中で、3人(10%)の患者でVNTRスコアの明らかな変化が検出されました。また、MRからMSに転換した7例のうち2例でVNTRの変化を認めており、MS株の再感染またはポリクローナル株が優勢になった可能性が示唆されました。一方で、MS転換例のうち4例ではVNTRの変化なしに遺伝子が変化しており、以前に感染したクローンに近縁のクローンが出現した可能性が示唆されました。
以上の結果から、MAC-PDにおけるMRは可逆的であり、マクロライドの継続はMSへの転換を妨げる可能性が示唆されました。また、MR分離株内では野生型と変異型のrrl遺伝子が様々な頻度で共存し、マクロライド中止によりMSクローンが優勢になりMRからMSに転換する可能性が考えられました。
MAC-PD治療中のマクロライド継続の是非については呼吸器内科医の大きな悩みの一つです。本研究結果が、今後のマクロライド耐性のMAC-PD治療の大きな変換点になるかもしれません。