抄読会へのご参加、ありがとうございました
抄読会の内容を振り返らせていただきます。
2024年12月抄読会
1)桐生厚生総合病院 原健太郎先生
「未診断の呼吸器症状を持つ成人における呼吸困難の影響について」
Bierbrier, J et.al Impact of Dyspnea on Adults With Respiratory Symptoms Without a Defined Diagnosis Chest, 2024 Sep 4; S0012-3692(24)05133
PRISm (preserved Ratio Impaired Spirometory)という以下に当てはまる概念があります。
• 1秒率が保たれている肺機能障害
• 1秒率≧70% かつ 予測1秒量≦80%
本研究では、PRISmを含む呼吸器疾患(喘息、COPD)が及ぼす呼吸困難感への影響について検討されました。呼吸器症状呈し、肺疾患は未診断の成人2857人と年齢をマッチさせた健常対象群231人が、気管支拡張薬使用前後のスパイロメトリー検査でCOPD、気管支喘息、PRISmの診断に該当するか評価されました。
• 正常肺機能 2090人(73.2%)
• 気管支喘息 265人 (9.31%)
• COPD 330人 (11.5%)
• PRISm 172人 (6.0%)
の内訳でした。
その結果、PRISm患者はより高い呼吸困難スコアを認めました(平均スコア63.0; 95% CI, 59.5-66.4)。
本研究結果から、未診断の呼吸器症状を持つ個人の呼吸困難による影響に、PRISmが最も呼吸困難の影響を当て得る可能性が示唆されました。
2)前橋赤十字病院 星野裕紀先生
「がん診断後6ヶ月以内の禁煙で生存利益が最大化」
Cinciripini PM, et al. Survival Outcomes of an Early Intervention Smoking Cessation Treatment After a Cancer Diagnosis. JAMA Oncol. 2024 Oct 31:e244890
癌患者における喫煙は、総死亡率および2次癌のリスクを増加させ、これまで禁煙治療に取り組むタイミングが生存利益にもたらす影響については十分に解明されていませんでした。
本研究では2006年1月1日から2022年3月3日までのMD Anderson癌センターの患者データ、約4500名分を基に、がんと診断されてからの禁煙治療に取り組むタイミングを3つに分類し、それぞれの生存転帰を前向きコホートで評価しました。
最多の癌は、乳がんと肺癌がいずれも約17%でした。
禁煙治療プログラムは以下のような方法が取られました。
・6〜8回の認知行動カウンセリング(95%以上リモートで実施)
・10〜12週間の薬物療法
・(ニコチン置換療法(パッチ,ガム,キャンディー)、ブプロピオン、バレニクリン)
本研究では、禁煙治療を開始してから3ヶ月後、6ヶ月後、9ヶ月後の喫煙状況を調べ、それぞれの時点で過去7日間は喫煙しなかったと自己申告した人を禁煙者と判定されました。
主要評価項目は、(MD Anderson癌センターに登録された)生存期間でした。
• 各評価時点での禁煙率は、
・3ヶ月時点で42%(1900/4526)
・6ヶ月時点で40%(1811/4526)
・9ヶ月時点で36%(1635/4526)
・49.8%が女性
・StageⅣ期:1331/4526(29.4%)
でした。
治療開始から3ヶ月時点での禁煙者は喫煙者と比較して5年および10年時点での生存率が改善し、生存期間は禁煙者で5.7年、喫煙者で4.4年でした。
さらに、診断後3ヶ月以内に禁煙:0.75(0.69-0.83)
診断後6ヶ月以内に禁煙:0.79(0.71-0.88)
診断後9ヶ月以内に禁煙:0.85(0.76-0.95)
といった結果が得られました。
6ヶ月以内に禁煙治療を開始した患者では、1.8年生存期間が延長し
6ヶ月〜5年以内に禁煙治療を開始していた患者では、1.2年生存期間が延長し、5年以上経過してから禁煙治療を開始していた場合、生存期間との有意な関連性は認められませんでした。
本研究の結果は、がんと診断された喫煙者が禁煙する動機づけとなり、禁煙治療はがん治療の一次治療となる可能性が示唆されました。
結論として、治療開始から3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月時点の禁煙継続が、生存率の改善と関連していました。