抄読会へのご参加、ありがとうございました
20220427 抄読会にご参加いただき、ありがとうございました。
抄読会の内容を振り返らせていただきます。
1)群馬大学医学部附属病院の三浦先生からは、遺伝子マルチ検査における末梢肺病変細胞診検体の有用性についての論文をご紹介頂きました。
聖マリアンナ大学で行われた、222検体を用いた前向き試験であり、細胞診検体153例と組織検体69例を調べています。細胞診検体は気管支鏡検査または胸水からでした。
EBUS-GS-TBBからのDNAシークエンスの成功率は97.9%であり、生検検体との間に有意差はありませんでした。EBUS-GS-TBBからのRNAシークエンスの成功率は80.4%で手術検体と比べると低い傾向にありました。しかしながらドライバー変異はどちらの検体からも検出可能でした。
利点は侵襲が少ないこと、気管支鏡検査でブラシでの細胞診検体より行えること、同じ検体で診断・解析用とわけて提出することができるので結果がでるまでの時間のロスがないこと、が述べられておりました。Limitationとしては、単施設コホートであること、新鮮凍結検体での解析は実臨床では難しいこと、DNA/RNA抽出量だけでなく質の評価も必要であること、が述べられておりました。
当院でも包括的遺伝子変異検査システム(MINtSシステム)構築研究(NEJ021A試験)、その後のNEJ021C試験にも参加したこと、また当院で行っている臨床試験についてもご発表いただきました。
近々保険適応されるとのことで、今後の実施臨床への導入が待たれるところです。
2)群馬大学医学部附属病院の櫻井からは、コロナワクチン関連肺障害についての論文をご紹介させていただきました。
本論文では2例のCOVID-19 mRNA vaccine-related interstitial lung diseaseを紹介しており、うち1例は気管支鏡にて診断されておりました。どちらもステロイド治療にて改善しております。その他報告されている7例と併せて文献的考察をされておりますが、既存のILDは9例中4例、ステロイド治療は9例中8例にて行われ、全員改善しております。
ご参加いただいた先生方より実際ご経験した症例(コロナワクチン関連肺障害の診断にてステロイド治療を行った症例、また血管炎・IgA腎症を生じた症例)につき、貴重なご報告をいただきました。
私たち呼吸器内科は間質性肺炎やCOPD、気管支喘息や肺癌などの患者さんを診察しており、新型コロナウィルス感染症に感染した際は重症化のリスクがあるためワクチン接種を推奨しておりますが、このような報告もあることより、既存の疾患の悪化かどうかの鑑別も踏まえて注意深い診療が必要と考えられました。
来月の抄読会は、5月25日(水)19時〜です。よろしくお願いいたします。