抄読会へのご参加ありがとうございました

2024年7月24日 
抄読会へのご参加、ありがとうございました。
抄読会の内容を振り返らせていただきます。

1)群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 砂長則明
「高齢者進行非小細胞肺癌に対する免疫療法または免疫療法併用化学療法」

Yoko Tsukita, et al. Immunotherapy or chemoimmunotherapy in older adults with advanced non-small cell lung cancer. JAMA Oncol. 2024;10:439-447.

ICI+化学療法はドライバー変異のないNSCLCの標準治療ですが、高齢者肺癌に対するエビデンスは少ない状況です。NEJグループが行った本研究は、75歳以上のNSCLCのICIケモに関する報告です。1245例中、化学療法単独、ICI単独、ICI+化学療法がほぼ1/3ずつの割合でした。高齢者においてはICI単剤とICI+化学療法のいずれにおいてもOSに有意な差が認められませんでした。さらにPD-L1発現>1%でも同様の結果で、PD-L1発現量に依存せずICI単剤とICI+化学療法の間においては、OS, PFSいずれにおいても有意差は認められませんでした。
OS不良因子は80歳以上の超高齢者、PS2-4の不良例、扁平上皮肺癌、
PFS不良因子はPS2-4の不良例でした。
さらに、肺炎のirAEは23.4%で認められ、Grade3以上が11.6%でした。
779例のICI前治療群で全グレードの肺障害は19%、Grade3以上が9%も見られました。
以上の結果から、高齢者肺癌においてはICI単剤とICI+化学療法群で治療効果に大きな差は認められず、ICI+化学療法よりもICI単剤が推奨される可能性が示唆されました。しかしながら、ICI単剤でも肺炎の有害事象発現が多く、ICIは安全に治療できるレジメンではない事が示唆されました。一方で、Atezolizumabの治療群は症例数が少なかったため、Atezolizumabの高齢者治療のエビデンスはさらなる症例の蓄積が必要と思われました。



2) 群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 黒岩裕也
「患者と臨床医ががん診療の一環として電子的患者報告アウトカム評価を使用した経験について」

Amelia Payne, et al. Patient and clinician-reported experiences of using electronic patient reported outcome measures (ePROMs) as part of routine cancer care. J Patient Rep Outcomes. 2023;7:42.
本研究は、癌診療の一環として患者さんが報告するアウトカム評価に関する報告です。
患者報告アウトカムであるPRO(Patient-reported outcome)は、紙媒体などの従来のCATやACTなどが知られています。近年は患者さんが電子プラットフォームを用いたePROMs(electronic patient reported outcome mesurements)が導入されて、生存率の改善や救急入院の減少効果などが知られています。
本研究では、英国のガン治療センターで2019年1月より導入されたサービスで肺癌と頭頸部癌患者さんを対象として行われました。
質問票はEQ-5D-5LツールやCTCAEから引用しました。患者さんの回答に対して、緊急受診を促したり、かかりつけ医を受診するようなアラートシステムが導入されました。
また主治医も別のシステムにアクセスして回答が促されました。
PS良好な100例の患者さんが本研究に参加され、ePROMに関する患者さんへのアンケート調査では、システムへのアクセスが簡単で理解しやすい内容で質問票の回答時間や質問票を促されるタイミングも適切だったとの回答が得られました。さらに、80%以上の方が、臨床腫瘍チームとのコミュニケーションや自信のケアに深く関わっていると感じていました。さらに18人の方がセルフケアのアドバイスをうけて助かったと感じていました。
医師も患者さんとのコミュニケーションに役立ち、診察しやすくなったと回答していました。
以上より、ほぼ全ての患者さんが使用しやすく受け入れやすいと回答されて、コミュニケーションの向上や患者さんが診療やケアへより関わりやすくなる可能性が示唆されました。



3) 群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 根生明李
「Dupilumab上乗せで2型炎症を呈するCOPD増悪の年間発生率を減少させ呼吸機能改善をもたらすかを検証した二重盲検プラセボ対照第Ⅲ相無作為化比較試験について」

Dupilumab for COPD with Blood Eosinophil Evidence of Type 2 Inflammation. ;N Engl J Med . 2024 May 20 . PMID : 38767614
本研究では、従来のトリプル吸入治療を受けながらもコントロール不良なCOPD患者さんに対してデュピルマブの効果を見た研究です。
935人を対象とした2020.7〜2023.5にかけて行われたRCTです。
COPD診断から1年以上経過し、末梢血好酸球数が300/µL以上、過去1年間にOCSを必要としている急性増悪を2回以上経験し、気管支拡張前のFEV<70%の症例が対象となりました。
平均年齢は65歳で、30%が現喫煙者で、FeNOの中央値は16ppb、FEV1は1.38Lでした。
主要評価項目はOCSを必要とする中等度以上の増悪の発生率で副次評価項目は12週目のFEV1の変化でした。
年間の増悪率はデュピルマブvsプラセボで0.86vs1.30と有意差をもってデュピルマブ群で少なく、最初の増悪を来すまでの期間もデュピルマブ群で長い結果でした。
FEV1の変化は、12週目の、デュピルマブ群で139mLであったのに対しプラセボ群では57mLで、デュピルマブ群で有意に良好な結果でした。さらにFeNO>20ppb群ではさらに良好な結果がデュピルマブ群で見られました。両群間で有害事象に有意な差は見られませんでした
本研究から、標準的な吸入療法にデュピルマブを併用することで2型炎症を呈するCOPD症例において、OCSを必要とする急性増悪を予防する効果が示されました。