抄読会へのご参加ありがとうございました
2024年6月26日
抄読会へのご参加、ありがとうございました。
抄読会の内容を振り返らせていただきます。
1)群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科 吉田大祐先生
「80歳以上の患者における免疫チェックポイント阻害剤の安全性:後ろ向きコホート研究」
Tatsuki Ikoma et al. Safety of immune checkpoint inhibitors in patients aged over 80 years: a retrospective cohort study. Cancer Immunol Immunother. 2024 May;73(7):126
ICIの高齢者への使用に際しては、irAE等によるICI中止は高齢者に多く、本研究は高齢者へのICI使用に関する研究です。本研究では、80歳以上の固形腫瘍患者で、ICIを含む1サイクル以上のケモを実施された症例が対象でした。PS2以上の良好なPS群はirAEの発生率は有意に低い結果でした(P<0.03)。また末梢血好酸球数がirAEの発症と関係していました。ROC曲線でのEOS数のカットオフ値は>118[/μL]でした。また本研究の高齢者におけるirAE中止率は19%でした。高齢者における相対的な副腎筆機能不全による好酸球数上昇がICIによるirAEに関与している可能性が示唆されました。
2)前橋赤十字病院 呼吸器内科 宇野翔吾先生
「植物中心の食事は放射線画像の肺気腫と逆相関する。CARDIA Lung Studyの結果より。」
A Plant-Centered Diet is Inversely Associated With Radiographic Emphysema: Findings from the CARDIA Lung Study Mariah K, et al. Chronic Obstr Pulm Dis.2024 Mar 26;11(2)164-173.
本研究は、野菜果物中心の食生活が気腫性変化への影響を検討した研究です。禁煙は長期的な成功率に問題があり、禁煙指導だけでは不十分です。先行研究では肉中心の喫煙者は肺機能障害リスクが高いことが知られています。
冠動脈リスク発症に関するCARDIA lung studyの前向きコホート研究5115名の30年間の追跡研究データの解析です。46品目の食品群を有益群、非有益群、中立群の3群に分けられました。
有益食品群は果物、アボガド、豆類、力宝飾野菜、トマトや野菜、ナッツ類、大豆製品、脂肪の多い魚、鶏肉、適量アルコール、コーヒーなどでした。
お肉中心の食生活群で最も気腫性変化が強い結果でした。多変量解析後は、この群と比較して、最も有益な食事群では56%の軽減効果が見られました。APDQSが1SD高くなる事に、肺気腫オッズは34%低下しました。
本研究から、若年成人に植物中心の食事を遵守させることで、喫煙歴と関係なく将来の肺気腫リスクを低下させる可能性が示唆されました。
3)群馬大学医学部附属病院 鶴巻寛朗先生
「生物学的製剤による治療を受けた重症喘息患者における臨床的反応と寛解」
Clinical Response and Remission in Patients With Severe Asthma Treated With Biologic Therapies.
Hansen S, Baastrup Sondergaard M, von Bulow A, Bjerrum AS, Schmid J, Rasmussen LM, et al. Chest. 2024;165(2):253-66.
重症喘息においては5種類の生物学的製剤が使用可能であり、いずれも喘息症状の改善、増悪抑制、肺機能の改善、定期ステロイドの減量に関する効果が示されています。現在、各国でこれまでの生物学的製剤の治療に関する情報を基にして、生物学的製剤の治療下における達成目標(Clinical remission, CR)を策定しています。日本においては、山口大学の大石先生、松永先生らにより臨床的寛解の達成状況を報告され、喘息診療実践ガイドライン2023で臨床的寛解における3つの基準(ACT≧23, 増悪なし, 定期ステロイド薬使用なし)が提案されました。本研究は、2024年2月にCHEST誌で報告されたデンマークの重症喘息レジストリーにおいて生物学的製剤による臨床的反応とCRの達成状況およびそれらに影響を与える因子を解析した研究です。775名のレジストリーの中で必要な情報が回収できた501例が後方視的に解析されました。COPD合併は約20%でした。生物学的製剤治療後4ヶ月後、12ヶ月後には、問診スコアやステロイド使用量は減少していました。臨床的寛解率は19%で、治療が奏効したのは79%でした。以上の結果から、臨床的寛解率は20%以下と低いことが明らかとなりました。罹病期間とBMIは、独立して臨床的寛解率に影響を与えていました(OR 0.92, 0.98)。症状スコアや肺機能が保たれている方が臨床的寛解を達成しやすい傾向が見られました。