抄読会へのご参加ありがとうございました。

2023年8月23日 抄読会へのご参加、ありがとうございました。
抄読会の内容を振り返らせていただきます

高崎総合医療センター 星野裕紀
「パクリタキセルによる末梢神経障害 冷却療法による予防法」

Effects of Cryotherapy on Objective and Subjective Symptoms of Paclitaxel-Induced Neuropathy: Prospective Self-Controlled Trial
Akiko Hanai et al.J Natl Cancer Inst. 2018 Feb 1;110(2):141-148.

本研究は、Weeklyパクリタキセル投与中の乳癌患者を90分間にわたり非利き手の冷却を行い、末梢神経障害に対する効果を検証した研究です。
36人の乳癌患者さんで解析を行い、一定量(960mg/m2)に達したときのナイロン繊維の触覚検査や温度覚障害、末梢神経障害のスケール評価で検討されました。
結果は客観的評価の触覚障害では、冷却側と非冷却側では手では55.6%、足では38.9%の触覚障害の違いが見られました。温刺激では30%前後、冷刺激でも10%前後の有意な相違が見られました。
また、末梢神経障害の主観的なスケール評価でも、手の非冷却側では41.7%、冷却側では2.8%の末梢神経障害と、有意な相違が見られました。
本研究結果から、冷却療法は血管収縮により末梢神経への薬剤暴露を抑える効果が期待されました。
Limitationとしてはプラセボ効果があることや、パクリタキセル投与後の末梢神経障害の評価がなされなかったことが挙げられました。
また抄読会のディスカッションでは、群馬大学医学部附属病院の外来化学療法センター、高崎総合医療センターにおいて、パクリタキセル投与患者さんで手指4カ所の冷却療法が行われていることが報告されていました。


桐生厚生総合病院 原健太郎
「COVID-19の規制緩和に伴う気管支喘息増悪のリバウンド」

Rebound in asthma exacerbations following relaxation of COVID-19 restrictions: a longitudinal population-based study.

Thorax . 2023 Aug;78(8):752-759


COVID19の流行に際し、以下ののような社会的規制がイギリスで設けられてきました。

2020年3月 ロックダウン
2021年4月〜規制緩和開始
2022年2月からCOVID19に関する全ての法的規制を撤廃

そして、2020年以降にCOVID19パンデミックでの規制で喘息増悪が減少したことが報告されていました。そこで本研究では、2020年2022年4月までのイギリスの16歳以上の2312人の喘息患者から毎月オンラインアンケートで自己申告制のデータ収集を行いCOVID19感染と喘息増悪との相関性を検討いたしました。
その結果、2021年4月の規制緩和後から全身性ステロイドを要する喘息増悪が増加し始めて、それ以後の規制撤廃にかけて時系列でさらに喘息の増悪の機会が増えて来ていました。
つまりCOVID19に関する規制緩和に伴う社会的暴露の機会の増加と、全身性ステロイドを要する喘息増悪の増加が同じように変化していました。
また本研究では、COVID19感染とそれ以外の感染いずれも喘息増悪の増加と同じようなスロープが描かれていました。
Limitationとしては、2020年11月以前のデータに関しては不明であり、ロックダウンや規制緩和に伴う喘息治療アドヒアランスの変化が考慮されていないことが挙げられていました。