抄読会へのご参加ありがとうございました。

2023年5月23日 抄読会へのご参加、ありがとうございました。
抄読会の内容を振り返らせていただきます。


群馬大学医学部附属病院  宇野先生からは閉塞性睡眠時無呼吸症候群および糖尿病性腎症患者における、アルブミン尿進行に対する持続陽圧呼吸療法の効果:ランダム化臨床試験、をご紹介いただきました。
本研究では、OSASに対して糖尿病性腎症患者におけるアルブミン尿進行に対する効果を多施設でランダム化比較試験で行われました。2型糖尿病で2期以上or eGFR<60の糖尿病性腎症を有する症例が対象でした。プライマリーエンドポイントは尿中アルブミン尿のベースラインからの変化でした。1日4時間以上の使用群をアドヒアランス良好群(47名)としました。
93人がCPAP、92人がCPAP未治療群に割り振られ、52週追跡可能がぞれぞれ74、78名でした。未治療群と比してCPAP治療群で有意なアルブミン尿の改善効果を認めました。AHIの高い方がより効果が認められる傾向で、腎症の罹患が5年未満の方も効果が得られやすい傾向でした。さらにアドヒアランス良好群でアルブミン尿が9%減少しました。副次評価項目では、未治療群と比してCPAP治療群でHbA1cの改善効果を認め、HOMA-IRの改善硬化がありインスリン抵抗性の改善効果が示唆されました。夜間低酸素による酸化ストレスの軽減やRAA経活性亢進の抑制効果などがCPAPによってもたらされ、アルブミン尿進行への抑制効果が得られている事が考察されていました。



群馬大学医学部附属病院  矢冨先生からは、
Swedenにおける、レミエール症候群を含むFusobacterium necrophorumについてご紹介いただきました。
Fusobacterium necrophorum感染症は、グラム陰性嫌気性桿菌であり若年者に発症しやすく、時に敗血症などを呈し重症化することがある感染症です。本論文では、2010年〜2017年までの300例の症例が解析されました。
上気道感染に引き続く内頚静脈血栓および菌血症、さらには敗血症性肺塞栓を惹起する症候群として定義されたレミエール症候群と、レミエール症候群の基準を満たさない頭頸部感染症、そして非頭頸部感染症の3群に分類されました。
2010年以降、発生数が上昇傾向でありレミエール症候群も増加傾向を示し、さらに重症化を来す傾向を認めました。
レミエール症候群は若年発症が多く、非レミエールタイプは高齢の発症を認める傾向でした。
レミエール症候群の死亡率は104人中2人で、胸膜ドレナージが35例(34%)で行われました。また、非レミエール症候群タイプは入院期間が短い傾向で敗血症の発症率も低い傾向でした。
Fusobacteriumによる侵襲性感染症の発生率が年々、増加傾向であり、侵襲性非頭頸部感染症の死亡率がレミエール症候群タイプよりも高いが本研究から明らかとなりました。
 


群馬大学医学部附属病院 古賀からは、間質性肺疾患による肺高血圧症(III群)の吸入トレプロスチニルの長期効果の結果が報告されました。

2021年にNEJMに発表されたRCTのINCREASE STUDYでは、16週間の吸入トレプロスチニルの6分間歩行距離の改善効果が示されていました。その結果を受けてFDAがIII群PHに対して本剤を承認しましたがその長期効果は不明でした。本研究では、その後の延長試験でプラセボ群に割り振られた群にも実薬を投与して、全350例近いIII群PHに対する吸入トレプロスチニルの64週のオープンラベルの長期効果と安全性を検証しました。
RCTにおいてプラセボだった群も52週目までベースラインより6分間歩行距離は継続して増加し、NT-proBNPへの改善効果も一貫して認めました。全群でFVC改善効果も一貫して認めましたが、CTD-ILDではFVCの改善効果は一貫性を認めませんでした。増悪イベントまでの期間はRCT時のプラセボ群の方が実薬群よりも短く、早期治療介入が望ましい結果でした。主な有害事象は①咳嗽、②呼吸困難、③頭痛で、これらの有害事象はRCTでプラセボを投与されていた群で有意に多く認めました。結果として、吸入トレプロスチニルは64週間にわたって、間質性肺疾患による肺高血圧症(III群)に対して換気血流不均衡を悪化させる事無く、長期的に有効で安全な治療薬でした。