抄読会へのご参加、ありがとうございました。

20220322 抄読会へご参加いただき、ありがとうございました。

抄読会の内容を振り返らせていただきます。

1)渋川医療センター 大貫祐史先生からは、結核性胸水の診断におけるスコアリングモデルについての論文をご紹介いただきました。
 125人(結核患者63人、非結核患者62人)を対象に後ろ向き検討しました。15項目の指標を対象とし、年齢、男性、悪性疾患でない、発熱、片側、ESR高値、CRP高値、T-SPOT陽性、胸水中のリンパ球比率、胸水中ADAに有意差は認められました。胸水中の蛋白質、LDHに有意差は認められず、症状にも有意差は認められませんでした。年齢46歳以下(4.96点)、男性(2.44点)、がんでない(3.19点)、T-SPOT陽性(4.69点)、ADA24.5U/L 以上(2.48点)、CRP52.8mg/L以上(1.84点)での合計11.038点をカットオフとして、感度93.7%、特異度96.8%、精度99.2%でした。29人を選んで性能を確かめました。片側胸水、胸水蛋白、胸水LDH,胸水リンパ球比率は最終的に診断モデルに含まれませんでした。非結核性胸水は主に悪性腫瘍によるもので、片側性やリンパ球有意の侵襲性胸水であることが、鑑別の要因でした、との報告をご発表いただきました。

2)群馬大学医学部附属病院 武藤 壮平先生からは、気管支拡張症に対するDPP-1阻害薬ブレンソカチブの第2相試験についての論文をご紹介いただきました。
2018年に, 悪性渦巻(vicious vortex)モデルが提唱され、気管支拡張症は, 好中球性炎症に関連すると考えらえる増悪が頻回に見られています。気管支拡張症患者の喀痰では, ベースライン時には好中球エラスターゼなどの好中球セリンプロテアーゼの活性と量が多く, 増悪中はさらに増大します。ブレンソカチブは, 好中球セリンプロテアーゼの活性を担う酵素であるジぺプチジルペプチダーゼ1(DPP-1)を可逆的に阻害する経口薬であり、第2相無作為化二重盲検プラセボ対照試験で, 過去1年間に増悪が少なくとも2回みられた気管支拡張症患者を, プラセボ群とブレンソカチブ10mg群, ブレンソカチブ25mgに1:1:1の割合で無作為に割り付け, 1日1回24週間投与し、初回増悪までの期間(主要エンドポイント), 増悪率(副次的エンドポイント), 喀痰中の好中球エラスターゼ活性, 安全性を評価しました。416人の患者がスクリーニングを受け, 256人が無作為化され、合計87人の患者がプラセボ群に, 82人が10mgブレンソカチブ群に,87人が25mgブレンソカチブ群に割り当てられました。最初の増悪までの期間の25パーセンタイルは, プラセボ群で67日,
ブレンソカチブ10mg群で134日, ブレンソカチブ25mg群で96日であり、1回以上の増悪があった患者の割合は, プラセボ群よりも各ブレンソカチブ群で有意に低く、サブグループ解析では, 年代層や1年間の増悪回数, マクロライドの長期投与, 緑膿菌の検出の有無, ベースラインにおける痰の好中球エラスターゼ濃度などに関係なく, 最初の増悪までの時間と頻度が,プラセボに対してブレンソカチブが優れているとの結果でした。本試験では, 気管支拡張症患者の好中球セリンプロテアーゼ活性がブレンソカチブにより低下したことが, 気管支拡張症の臨床転帰の改善に関連しており、本邦含め国際共同の第Ⅲ相臨床試験が進行中である、との報告をご発表いただきました。

 来月より学術係が、古賀先生に担当変更となります。1年間ありがとうございました。

来月の抄読会は、4月26日(水)19時〜です。よろしくお願いいたします。  櫻井麗子